第37話 風の音楽祭

春の訪れを告げる暖かい風が桃源郷を吹き抜けた日、小袖君は村で初めての風の音楽祭を開催することを提案した。彼の想いは、春の風をテーマにした音楽とダンスで、冬の長い静けさを吹き飛ばし、村人たちの心に新たな活力を吹き込むことだった。


恋歌と村の他の若者たちもこのアイデアに熱心に賛同し、祭りの準備を始めた。彼らは村の広場に特大の風鈴を設置し、その鈴の音が風に乗って鳴る度に美しい旋律が生まれるようにした。また、地元の楽器職人に依頼して、風が吹くと自然に音が出る楽器もいくつか作ってもらった。


音楽祭の日が来ると、朝から村中が活気に満ちていた。風の音楽祭は、風に動かされる楽器だけでなく、村の音楽家たちによる生演奏も予定されていた。小袖君と恋歌は、オープニングセレモニーで美しい風の舞を披露し、観客を魅了した。


音楽が始まると、その旋律に導かれるようにして村人たちは一つになり、踊り始めた。子供たちは自由に走り回り、大人たちも日々の悩みを忘れて楽しんだ。風が楽器を通して奏でる音楽は、まるで自然そのものが一緒に祝っているかのようだった。


日が落ちてくると、小袖君は特別な魔法を用いて、風に乗って光る粒子を作り出した。それは夜空に輝く星のように美しく、風の音楽に合わせて舞い踊った。村人たちはその幻想的な景色に心を奪われ、「これは忘れられない夜になる」と語り合った。


祭りの最後に、小袖君は村の中央で感謝の言葉を述べ、来年もまたこの祭りを続けることを約束した。恋歌も彼の隣で、「今日の音楽とダンスが、皆の心に春の喜びを運んできたことを願っているわ」と話した。


風の音楽祭は、その年から桃源郷の恒例行事となり、毎年春に開催されることになった。村人たちはこの日を、一年の中で最も楽しみにしている日の一つとして、心待ちにするようになった。

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