第27話 恋歌の心の迷路

春の終わりが近づき、桃源郷ではすべてが平和に見えた。しかし、恋歌は内心で葛藤を抱えていた。彼女は最近、自分の役割と桃源郷での未来について不安を感じ始めており、それが小袖君にも影響を与えていることに気がついた。


ある日、恋歌は小袖君との散歩中、突然その思いを打ち明けた。「小袖君、私、本当にこの村で役に立ってるのかな? あなたのように大きな魔法は使えないし、ただのお荷物じゃないかしら…」


小袖君は驚いたが、彼女の手を優しく握りながら、「恋歌、そんなことないよ。君はこの村でとても大切な人だ。君がいないと、僕は今の自分ではいられなかった」と真剣に答えた。


恋歌の不安を解消するため、小袖君は彼女が自分の能力と価値を再発見できるような特別な日を計画した。彼は恋歌の好きな花を集めて、村の中に小さな庭園を作るプロジェクトを始めることを提案し、恋歌をその責任者にした。


恋歌は最初はためらっていたが、プロジェクトに取り組むうちに、自分が村人たちからどれだけ愛されているかを実感し始めた。庭園プロジェクトは多くの村人が協力して進められ、彼女のリーダーシップと情熱が多くの支持を集めた。


庭園の完成日、村人たちはその美しさに感動し、恋歌に心からの感謝を表した。特に子供たちは新しい庭で遊ぶのが大好きで、恋歌は子供たちと一緒に花や植物について学ぶワークショップを開催した。


「恋歌さん、この庭は私たちにとって特別な場所になりました。あなたのおかげです」と村の一人が言い、恋歌は自分の価値と村での役割を改めて確認することができた。


その夜、小袖君と一緒に庭園を見ているとき、恋歌は彼に感謝の言葉を述べた。「小袖君、ありがとう。私もこの村に必要とされているんだって、やっと感じることができたわ。」 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る