第26話 悪夢の克服

桃源郷の長い夜、小袖君は不安定な夢に悩まされるようになった。彼の夢には、かつての敵や失敗した魔法、村に危機が迫る様子が繰り返し現れ、彼の心に重くのしかかっていた。


ある夜、小袖君は特に強烈な悪夢にうなされた。夢の中で、彼は再び巨大な龍を目の前にし、どうしても龍を鎮めることができず、村が火の海になる様子を無力に眺めるだけだった。目が覚めたとき、彼の額には冷や汗が浮かんでいた。


恋歌がその夜の様子を見て心配し、「小袖君、最近、夢でとても苦しんでいるのね。何かできることがあるなら言って」と言った。小袖君は疲れた様子でうなずき、「ありがとう、恋歌。でも、これは僕が自分で何とかしなくては」と静かに答えた。


決意した小袖君は、悪夢の原因を探るために、村の賢者に相談に行った。賢者は、「夢はしばしば私たちの内なる恐れや未解決の問題を映し出すものだ」と説明し、彼に内省と向き合うための瞑想の技を教えた。


小袖君は毎晩、就寝前に瞑想を行うようになった。彼は心の奥深くにある恐れと直面し、自分自身の中に平和を見つけるために努力した。数日間の瞑想の後、彼の夢は少しずつ変わり始めた。悪夢の中で自分が恐れに立ち向かい、問題を解決する姿を夢見るようになった。


そしてある夜、小袖君は再び龍の夢を見たが、今回は異なった。彼は夢の中で龍に近づき、自分の恐れを語り、龍と心を通わせた。龍はその言葉に応じ、穏やかに村を見守る守護者として彼の横に立った。目が覚めたとき、小袖君は心に大きな安堵と力強さを感じた。


翌朝、恋歌にこのことを話すと、彼女は嬉しそうに微笑んで、「小袖君、あなたは自分の内なる闘いに勝ったのね」と言った。小袖君は彼女に感謝し、「うん、恐れを乗り越えることができたよ。これも恋歌がそばにいてくれたからだよ」と答えた。

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