第6話 じっくり10分

「タキくんは、あとでポイントを測定します。細かいことは神園くんに聞いてください」


 こちらの様子を察したのか、宝塚がつけ足してくる。しかし神園は俺をチラ見しただけで、うなずきもしなかった。


「では入力タイムに突入です! 各ペア命運にかかわることですから、カウンセリングルームで10分ほど、じっくりご相談ください!」


 不安は大いに残っていたが、それはテンション高くかき消された。


「10分のどこがじっくりだ」


 文句も出る中、またもプシュンと音が響く。

 先ほどから聞く音で、今度は本当に扉が現れた。そこかしこに、よっつの扉が立っている。


「どこでも任意の空間でボタンを押す動作をすれば、扉が開きますので。あと、通信機も支給しておきます」


 そこで出てきたのは、腕時計だ。


「ボタンを押して話せば、ペア間で声が通じますよ」

「おぉ」


 見た目はスマートウォッチのようだが、通信までできるとは。若干テンションが上がる。

 画面には『12/22 17:46』とだけ表示されており、シンプルなものだ。


 そうこうする内に、神園がすぐそばの扉を開いた。腕にはダンボール大の箱を抱えている。


「神園くん、ボックスの説明なんかもしてあげてくださいね」


「こいつにはあんま関係ねーだろ」


 神園がそっけなく答えると、も~と言いながら宝塚が近づいてくる。


「この箱には、出先で落としたものなどが戻ってきます。あと、おそなえされたものはここに入っているんです。タキくんは今死んだばかりなので、おそなえはないでしょうが」


「まだ死んでない!」


 無意味だとしても、抵抗せずにおれない。ちなみに所持しているのは、ポケットに入っていた手帳だけだ。


「手元にあるのは、死んだ時に身につけていたものだけです」


 財布もスマホもなく、たちまち心細くなる。

 それからは、箱を壁際に置き、中に入った。


「無駄にクリスマス仕様……」


 こじんまりとした空間に、テーブルをはさんで椅子が二脚。ジムで一日体験した時も、こんな感じで目標なんかを聞かれたっけ。


 奥の席に腰かけ、端末くんを出してみる。


『次に近い罪を表示しますか』

 すると、早速の反応。


「お願いしま……」

「しなくていい」


 なのに突然さえぎられ、目の前を見る。


「なんでよ」

「生還はあきらめろ」


 しかも聞こえた言葉。何を言われたのかわからなかった。

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