第7話 あきらめろ
しかも、聞こえた言葉。何を言われたのかわからなかった。
「なんだよそれ」
反射で立ち上がったものの、すぐに衝撃がきた。
端末くんを取り上げられ、扉の方にひきずられる。殴られたのだとわかった。
「ざけんなテメッ!」
くらくらする頭でつかみかかる。またすぐに張り倒されたが、神園の手元にしがみついた。
「近い罪をみんな教えろ!」
「クソ、この……っ」
端末くんに向け叫ぶと、今度は蹴り飛ばされる。これで届いたのかはわからなかったが、ピーンと音がした。
『すべて、今年の出来事です』
神園が画面を見たため、無理やり横から覗き込む。
最初に示された罪と、その修正案。その二枠の下に、更に項目が追加されていた。
『10月29日、投資を持ち掛けた前田夫妻が、会社倒産』
『11月14日、借金を負わせた高木信照が、自殺未遂』
「そんな……、嘘だろ……」
読み上げられた罪に、言葉が続かない。彼らは金を必要としていただけで、普通の人に見えた。
「あれ? なんか……腕が変」
端末は奪い返せたが、そこでふと、体の違和感に気づく。腕が重だるい。
「ポイントを消費したからだろ。無駄遣いしやがって」
刺々しく返ってきて、結局外に出されてしまう。
「そのポイントって何だよ!」
神園は俺を無視していたが、引っ張っていかれたのは”靴跡”の前だった。床の上に、靴跡のような光が浮かんでいる。
「あぁ、来ましたねタキくん。この足型は体成分を測定する、”するっとボディくん”です。フィットネスクラブですからねぇ、筋肉量がポイントになるんですよ!」
そう説明され、ようやくポイントの正体を把握する。
ジムでも同じようなものに乗ったが、それは体重計のような形だった。
それでも言われるがままに、靴跡の上に乗る。
『木山タキ、十九歳。身長169cm、体重60kg』
下から上に、銀色の光が体をスキャンするように流れた。やぼったい名前の割に、最新鋭を越えている。
「年齢、身長、体重を考慮した筋肉量を、ポイントとして表示します。多いほどよく、アスリートでは100を超えたりしますよ」
説明と共に、目の前に人型マークが浮かび上がった。
◆木山タキ’S DATA◆
右腕 : 69point....
左腕 : 68point....
右足 : 79point....
左足 : 79point....
腹部 : 70point....
「フツーだな」
「さっき減ったからだろっ」
普通がどのくらいかわからないが、苛立っていたため言い返す。
「いえ、なかなかですよ。これが持ちポイントです。ゼロになると動かせなくなりますので、お気をつけて」
「ゼロとかあんの……?」
呟きには、笑みだけが返る。
そして予想していた通り、他のメンバーは最初に測ったのだそうだ。
「ちなみに測った時の数値が見えるのは、本人ペアにだけです」
そう教わったところで、外野からの声が聞こえてきた。
「宝塚さぁん、僕は直近と最大の罪が同じで、34%しかないんですけど~。その後よっつ聞いても、5%しか増えなくて……」
「品川ァ!!」
続いて、ボコッと音がする。
「手の内バラしてんじゃねーよ!」
品川がゲンコツを食らったようだ。
ここにいるメンツを見回して、明らかに人の良さそうな男、品川。相方らしい佐渡谷はさすが亡者というべきか、怒り顔が恐い。
とはいえたしかに、内情を知られるのは得策ではないだろう。
「しかも最大の罪を聞いたら、めちゃくちゃポイントを消費しただろうが! 聞いてねーぞ!」
「あぁ、すみません、全部は伝えきれなくて」
佐渡谷の怒鳴り声にも、あっさり謝る宝塚。
結構重要な情報だと思うが、亡者にも伝わっていないことがあるのだとわかる。
けれど、最大の罪を入れても34%だなんて。基準を理解するためにも、内容が知りたかった。
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