「それは私が『子供のころから竜の夢をみていたからなんだ。生きている竜の夢を見ていた。私が竜と出会うんじゃなくて、その夢の中では私は竜になっていた』の。子供の竜に。むーくんとくーちゃんが見てくれたあの竜の化石はね、『竜の子供の化石』なんだよ」と氷川さんは言った。

 その氷川さんの言葉をきいて二人はすっごくびっくりした。(あの大きさで子供なんだ。てっきり大人の竜だとばかり思ってた)

「あの竜の子供は女の子なんだよ。あの子は私で、私はあの子なんだ。あの竜の化石をみつけたとき、私はそう思った。あの子は私をみつけてほしいって、ずっと子供のころから私にメッセージをおくってくれていたんだと思ったの。私をみつけて、私を助けてって、そういうメッセージをね」

 氷川さんはどこか遠くを見るように空を見上げた。

 そんな氷川さんの横顔が一瞬だけ自分と同い年くらいの女の子に見えて、むーはびっくりする。

「あの質問があります。いいですか?」と小学校の授業のように手を挙げてくーが言った。

「はい。なんですか? くーちゃん」にっこりと笑って氷川さんは言う。

「どうしてあんなに強そうな竜は絶滅してしまったんでしょうか?」とくーは言った。

「それは、……とてもいい質問ですね」と少し驚いてから、笑顔に戻って氷川さんは言う。

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