第3話一日目午後

 副官の鹿島と別れた提督、佐々木は廊下の埃を払った。

「それにしても、これは専門業者が必要な水準だぞ」

 大方金がないために自分と鹿島が掃除要員になったのだろう。

 そう考えるとこんな仕事を考えた上層部に不満がある。

 だが、不満があっても仕事は片づけなければならない。

 どんなに不満があっても組織である限り組織内の役割は片づけなければならない。

 佐々木提督はそう考えなおすと廊下の拭き掃除に勤しむ。

 雑巾30枚は真っ黒になり使い物にならない。

 ティッシュ100箱とトイレットペーパー360ロールはすべてダストクリーンの袋の中である。

 トイレすら流せないという事態に佐々木提督は予想外だったので対処に苦慮した。

 設備は古くとも使用可能、調度品も手入れすれば誤魔化せる。

 艦隊司令部にはそう聞かされていた。

 全部、ゴミかガラクタ、おまけに廃棄物プラス処分するかどうか判断がつきかねる古くなった資料の山、さらには私物と思われる処分に困る品々まであった。

 使えそうか簡単に見て回ったがそれは難しそうだった。

 鹿島が一時間で戻ってきた。

「早いな」

「資料作成とメールでの送付、業務連絡は終わりました」

「有難う。ここはいいから喫茶店で涼んで来なさい」

「有難うございます。でも提督さん、ここの掃除をしなければなりません」

「それよりも連絡を頼むよ。窓ガラスは割れてるから業者が必要だとあとトイレも壊れてるから業者による修繕が必要だ。それに電気系統と情報系統が必要だから直さないといけない。ガスと水道も壊れてるからこれも業者が必要。最後に鎮守府自体が廃墟みたいな感じだからできれば建て替えが望ましいと伝えてほしい」

「わかりました。ですが予算的に厳しいですね」

「だから君には交渉に専念してほしい。車の運転は軍で習っただろう?ちょっと司令部まで行って談判してほしい」

「わかりました。でも、おそらく交渉しても難しいとは思いますが」

「頼むよ。業者にも事情を話して見積書を作成して送付してほしい。それぐらいはしないといけないから」

「そうですね。提督はどうしますか?」

「私はもう少し鎮守府を確認してほかに方法はないか検討するよ。難しいだろうが」

「わかりました。交渉と根回しはしてきます」

「頼むよ。それにしてもこの鎮守府はそれなりに広いな。広さは申し分ないんだが」

「廃墟ですからね。壁の床も傷み切ってますしカビなども発生しています」

「そうだな。業者が呼べない場合は我々二人と増員された人物でなんとかすることになるだろう」

「そうですね。増員の件と設備状況も報告してきます。交渉や報告は得意なので任せてください!」

 そういうと鹿島は慌ただしく出て行った。

 佐々木提督は床磨きに戻った。

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