第4話一日目夜

 佐々木は鹿島と飲食店にいた。

 時間は勤務時間外である。

 鹿島は残業を申し出たが仕事量的に残業で何とかなる量ではない。

 そもそも二人でどうこうなる仕事でもない。

 さらに鎮守府の復旧予算が数千万では足りないのだ。

 艦隊司令部の思惑通りに保存状態が良い鎮守府ならなんとかなったかもしれないが。

 おそらく鎮守府は土地代を除いて300億ほどで付属施設込みで建てられている。

 ところが鎮守府は多くの問題を抱えていた。

 佐々木は鎮守府敷地内も見てみたが敷地内に不法投棄が確認された。

 そもそもここにどこかの産業廃棄物業者が管理されてないことを良いことにごみの山を鎮守府に残していた。

 あまりにも多くのごみに佐々木は絶句した。

 ゴミの山は数十はある。

 完全にゴミ捨て場と化した横須賀鎮守府はまず復旧のためにゴミ山除去から図れなければならない。

 ゴミ山は大きく危険な廃棄物もあるだろう。

 業者に頼むには数十億は必要だ。

 佐々木はそれを考えると鹿島を見た。

 正直、鹿島が交渉で予算確保してくれなかったら自分は辞表を叩きつけて退職しよう。

 佐々木はそう考えた。

 鹿島に関しては辞表を出すときに次の配属先を斡旋してもらおう。

 長年、務めたのだからそれぐらいはもしかしたらなんとかなるかもしれない。

 鹿島はステーキ定食を食べている。

 佐々木も同じものを食べている。

 十中八九、佐々木は自分が退職になると思っている。

 鹿島も表には出さないが余りにも無茶苦茶なこの状況に嫌気が差しているはずだ。

 無理もない、鹿島の履歴を先ほど確認したが今年帝国大学を卒業して任官したのだ。

 エリートのはずでありキャリア組であるはずの自分がゴミ山と廃墟を予算もないのになんとかしろと言われたら不条理だと思うだろう。

 佐々木は言わなければならないことを言うために口を開いた。

「鹿島さん、申し訳ないけど今日確認した限りでは鎮守府復旧のためには予算が必要だ。明日も艦隊司令部に状況を報告してできるだけ早く必要な予算を確保できるように働きかけて欲しい」

「わかりました。提督さんはどうしますか?」

「私は残す必要があるものが鎮守府内に残ってないか確認する。宿舎やドッグ、倉庫などまだ確認してないところが多い。それと予算確保できなかったら私は直談判して動くかどうか自分でもやってみる。正直、予算不足では新司令部設立は夢のまた夢だ」

「そうですね。それで現在使える設備や物資はありましたか?」

「いや、全部朽ちて廃棄物になっていた。正直、残さないといけないのは古いけど記録として残さないといけないかもしれない書類ぐらいだ。明日以降、君には交渉が終わったら不要な書類を捨てるための書類整理を頼むよ」

「わかりました。私、頑張ります」

「そうだな。頑張ろう」

 佐々木は鹿島と踏ん張ることを決意した。

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