あやめビッグバン

@antedeluvian

あやめビッグバン

35枚目シングルのアンダー楽曲『車道側』のフォーメーションが公開された。

センターは筒井あやめさん。


同時にアンダーライブの開催も発表され、35枚目シングルの活動の全貌が明らかになった。

表題曲は山下美月さんが、アンダー楽曲、すなわちアンダーライブは筒井あやめさんが主導していくこととなる。


以前の記事で、乃木坂46の次の夢について考えた。

https://kakuyomu.jp/works/16818093073575070373/episodes/16818093073575246873


ここで書いたことを下敷きにして考えると、35枚目での筒井あやめさんのポジションは次の夢への第一歩として最も重要な場所といっても過言ではない。


その意味について、ここでは考えていきたい。


~~~


12th YEAR BIRTHDAY LIVE以降、乃木坂46は34枚目シングルのミニライブ、風とロックでパフォーマンスを行ってきた。


いずれも従来の乃木坂46の全体ライブとは一線を画していた。

最大のポイントは生歌の比重が大きくなったことだ。


これまでも、東京ドームでの「きっかけ」の歌唱など、重要な場面ではミックスされた音声への被せではなく、その時々のリアルタイムなメンバーたちの歌声を乃木坂46は届けてきた。


真に迫る感情表現がそこにあると、誰もが分かっているからだ。


その観点で考えてみると、4期生以降、「乃木坂スター誕生」の枠でメンバーたちは歌声を磨いてきた。

そのプロセスの中で、歌うことが好きになったというメンバーの声も多く聞こえる。



乃木坂46は、2020年のコロナ禍直前まで主にアジア圏でのライブ活動に力を入れていた。

乃木坂46はもともと対外的な活動を目指していたわけだ。


現状では、海外での対外活動においては櫻坂46に大きく水をあけられていると言っても差し支えはないと感じる。


その櫻坂46が目指すのは、ライブでのパフォーマンスの洗練化だ。それが人の心を動かす。

必ずしも言葉が十全に伝わる環境ではない以上、非言語ノンバーバルなパフォーマンスは核となるポイントになる。



2024年は乃木坂46にとって対外的な活動の年だ。

2月には武道館での赤えんぴつライブへの参戦、3月には前述したように風とロックで感動を巻き起こした。5月にはMrs. GREEN APPLEとの対バンが予定されている。


2月と3月に乃木坂46とそのファンが直面したのは、乃木坂46とは異なる世界で生きている人たちのステージ上での生き様だった。


従来の閉じた世界とは違い、世界は広い。

そういった世界に触れることで、乃木坂46は表現者としての自覚を改めて掴み取ることとなった。


対外活動は、表現力向上のモチベーションを彼女たちに与える場にもなっているのだ。


もっと表現を。

今の乃木坂46が追い求めるものはそれだ。

それがなければ、乃木坂46の外の世界で人々の心を動かすことはできない。



乃木坂46における表現力の追及は、大きく分けて二つある。


一つは全体ライブ、特にバースデーライブでの伝統とそのブラッシュアップ。

もう一つがアンダーライブでの新しい表現の追及。



もっと表現を、という目標があると仮定した時、アンダーライブの持つ意味は従来よりもさらに強くなるだろう。


6月のアンダーライブは、乃木坂46の歴史として初めて4・5期生のみによるものとなる。

いわば、これからの乃木坂46の中核メンバーになっていく人たちによるパフォーマンスの場だ。それはある種の宣言といっていい。これからの乃木坂46はこれである、という。


その中心に筒井あやめさんがいる。



筒井あやめさんは、非常にフラットな人間だ。

心はいつも比較的に凪いでいる。「落ち着いている」と評されるのは、何事にも動じず、どんな状況でも楽しもうという胆力に端を発している。


彼女を忌憚のない言葉で表すならば、無難であるということだ。

語弊があるかもしれないが、つまりは欠点がないということである。

もう少し言葉を付け加えるなら、王道的であるということ。


彼女は物事の芯になれる人間なのだ。


なぜ無難という言葉を遣ったかといえば、彼女はあらゆる表現の場で目立ったミスをすることがほとんどない。

乃木坂46にはそういったメンバーは多く存在している。



ミスをしない。

そこには功罪が同居する。


ミスをしない理由はいくつかある。


運がよかった。

たゆまぬ努力の賜物。

挑戦をしないから。



ライブは生ものだ。ミスはつきものである。

しかし、それでも、新しい表現をステージの上で進行する出来事の中で模索していくのが表現者である。

日頃のたゆまぬ努力というのは、新しい表現を成功させるための礎と言っていい。



乃木坂46が直面する表現における課題、それは「新しい表現の模索」であろう。

今回のアンダーセンターの決定は、言い換えれば、その課題へ先頭切って突っ込んでいくメンバーとして筒井あやめさんが選ばれたということだ。


彼女自身が言う。

「自分がどう変化していくか楽しみだ」と。


アンダーライブの場は乃木坂46の活動の中では特殊だとメンバーたちは言う。

自分の中の様々な感情と向き合う場だからだ。


後悔、失望、希望……。

それらの感情に正面切って向き合った時、人は真価を発揮する。


筒井あやめさんの中にどんな感情があるのか。

それは彼女自身もまだ掴み切れてはいない。もしかしたら、彼女の中に煮え切らない何かがあるのかもしれない。

それを彼女はこれから言語化していき形にしていくのだ。


静かな水面は綺麗だが、何も起こることはない。そこに波紋を起こすものが投げ入れられてこそ、新しい何かがそこに生まれる。

何もない真空中では、突然粒子が生成されることがある。充満しているエネルギーが質量を持つ瞬間が訪れるというわけだ。


今まさに、乃木坂46という文脈の中で新しい何かが生まれ出でようとしている。




当時最年少だった岩本蓮加さんは2019年24枚目シングルのアンダーセンターに選ばれた。

初めて目に見える責任のある立場を経験して、彼女は大きく変わった。

なにより、人の心に寄り添う力はそこから大きく花開いたように感じる。


次は筒井あやめさんの番である。

彼女には、もちろん今までも様々な責任やプレッシャーを抱えてきた。

しかしながら、ライブでスピーチをしたり、期よりも大きなチームを主導していくという、明確に見える立場を担うケースにたまたま巡り合ってこなかった。


その素質を彼女は十分に持っている。


乃木坂46の活動において、彼女に唯一不足していたのが立場や役割だったのではないかとすら感じる。


独りで海外に旅をしてもトラブルに見舞われない強運の持ち主。

凪いだ水面に漲る胆力。

5年以上積み重ねてきた経験が彼女を後押しする。


35枚目のアンダーライブの期間、彼女は20歳になる。

大きく花が開くその瞬間は近づいている。

その様は新しい宇宙の誕生にも似ている。



written by antedeluvian

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