第22話 愛と欲望の女神様

 ツマサキ市の中心部にある雑居ビル。スーツ姿の男性はビルに入り地下への階段を下りていく。昼まで薄暗い湿気が漂う地下の廊下を進む男の耳に空気を循環する動物の鳴き声のような音だけが届く。男は短い逆立った黒髪に鋭い目をして鼻は丸く口は真一文字に結んでおり、薄暗い廊下を黙って歩くその姿は少し怖い。

 男が歩く廊下の突き当りには大きな木製の扉がある。装飾され扉と丸いドアノブはどこか中世を思わせる。慣れた様子で扉に手をかけ開けて男は中へと入る。扉の向こうは屋根がドーム状の広い部屋で、石に組まれた柱が左右に等間隔で並び奥へと続いている。柱の間の床に赤い絨毯が敷かれていた。ランプの灯りが照らす薄暗いなか男は絨毯の上を歩いて奥へと歩みを続ける。部屋の奥には三段の壇上に玉座が置かれ女性が座っていた。男は壇上の前でひざまずく。


偉大なる騎士ナイツオブグローリー大河たいがよ。よくいらっしゃいました」


 ひざまずくスーツの男に女は笑顔で声をかける。男は大河という名前のようだ。

 女性は薄いピンクにぷっくりと丸みを帯びた唇に、鼻筋は細く青い瞳のぱっちりとした丸い目をした美しい女性だった。耳は髪に隠れて見えない。女性は細身で胸は小さく、ピンク色の下着が透けるほどの薄い、白いローブを身にまとっていた。

 ひざをつけたまま大河は、顔をあげ女性に口を開く。


「ヘスティア様もご機嫌うるわしく……」

「くだらない挨拶はいいわ。大河君。君がここに来たってことは何かあったのね?」


 挨拶を終えるとにっこりと笑って砕けた口調になる女性。ヘスティアと呼ばれる彼女がユースレスアンブレラのリーダーだ。ヘスティアの質問に大河はうなずき話を始めるのだった。


「はい。先の聖獣様の暴走により我らの中に不安が広がっております」

「そう…… 確かに聖獣様はお怒りよ。でも、我らにではないわ。敬虔な信徒との交流を邪魔しようとした番傘衆に怒ってるの。私にはわかるわ」


 胸に手をあてうなずきながら、目をつむるヘスティアだった。


「聖獣様は悲しんでいるの。皆の心が恐怖に打ち勝ち、聖獣様と共に地上の浄化に努めることを望んでいるのよ」


 目を見開いて顔を大河に向けたヘスティア、彼女は口に手をあて目を潤ませ悲し気に語る。


「かしこまりました。ヘスティア様と聖獣様の希望を皆に伝えます」

「うん。お願いね」


 頭を下げた大河にヘスティアにっこりとほほ笑んだ。彼女は両足を少し開いてゆっくりと右足を上げ、下着を大河に見せるように足を組む。大河の視線にはっきりとヘスティアの下着が見えたが彼は淡々と話を続ける。


「後、もう一つお知らせが……」

「なーに?」


 首をかしげて笑うヘスティアだった。大河は小さくうなずき彼女に答える。


「はい。穢れた傘どもにいる同士の情報でご神体が見つかったそうです」

「そうなの? やったわね……」


 嬉しそうに笑い右手の拳を握ったヘスティアだった。大河は顔をあげヘスティアを見ながら言葉を続ける。


「穢れた傘どもはご神体を町へ運び込むようです」

「ふーん。どうせあの汚いエーテルとかいう力の研究のためでしょ…… くだらない」


 悔しそうに顔をしかめるヘスティアだった。彼女は立ち上がり大河の前に向かう。


「大河君…… ご神体を運ぶ人間はわかる?」

「はい。大神と特務第十小隊だそうです」

「特務第十小隊…… この間の夜会を邪魔したやつらね?」


 うなずく大河にヘスティアは彼を見下ろし、いたずらに微笑み首をかしげた。


「大河君…… 彼らと遊んでご神体を奪って来てくれる?」


 笑顔で明るい声のヘスティアだったが、目は冷たく恨みがこもった力強く怪しい光を放っていた。大河はヘスティアに圧倒されながら静かにうなずいて返事をする。


「はっ! 仰せのままに……」


 立ち上がった大河はヘスティアに、頭を下げると彼女に背を向け立ち去ろうと足を踏み出した。しかし、なぜか彼女は不服そうに口をとがらせる。そして壇上を駆けおりていく。


「待てぇ!」

「へっヘスティア様!?」


 大河の背中に抱き着いて甘えた声をだすヘスティアだった。急なことに困惑した表情を浮かべる大河だった。ヘスティアは背中から右手を下し大河の股間にあてる。


「私は愛の女神でもあるのよ? 愛が足りないの! 久しぶりに大河君が欲しくなっちゃった」

「そっその…… 任務がありますから……」

「ダーメ! 任務あるならなおさら私が愛せばもっといいことがあるでしょ!! いいから来なさい!」

「やっやめてください! いきますから!!!」


 ヘスティアは右手を強く握った。大河が腰を曲げ必死にやめるように懇願するのだった。大河は背中からひきずらるようにして部屋の奥へと連れて行かれた。薄暗い部屋の奥へと消えて行った二人。

 奥には小さな扉があり、ヘスティアは体を斜めし左手で大河の体をつかんだまま、右手で器用に扉を開ける。扉の向こうには彼女の寝室で、広い部屋の中央に天蓋がある豪華なベッドが置かれていた。ベッドは大きく三人くらいであれば余裕で寝られるほどだった。


「えーい!」

「うわ!!!!」


 ヘスティアはベッドの上に大河を放り投げるようにして寝かせた。大河はベッドの端に仰向けに転がった。ベッドの脇に立ったヘスティアが彼を見下ろして笑う。彼女はローブに手をかけて胸元をひらく、静かにローブは彼女の体を通って足元へと落ちていく。細く真っ白い肌でピンク色の下着に包まれたヘスティアの体があらわになる。

 大河のズボンの股間の部分が大きく張り出した。ヘスティアはそれを見て満足そうにうなずいた。ゆっくりと膝をベッドについたヘスティアは彼の両足をまたいだ。両手を膝から太ももへと順に移動させ、ズボンのベルトにかける。

 大河のズボンのベルトを外しながらほほ笑むヘスティア、慣れた様子でベルトを外した彼女はズボンと同時に大河の下着も膝までずり下した。


「ふふふ。いただきまーす。うふ。おいひい……」


 大河の股間を見てほほ笑んだヘスティアは口を大きく開け、頭を下げ腰を上にあげた姿勢になるのだった。ヘスティアは欲望に任せて大河に食らいつく。大河から吐息交じりの甘い息がもれる。


「あっ……」

「ぷは! かわいい。いっぱい愛していっーーーーーぱい強くしてあげる…… はむ……」


 ヘスティアはいったん顔をあげ、右手をはなし垂れた髪をかき上げた耳の後ろへと持っていく。かき上げられた髪の隙間から細長くとがった耳がのぞき、そのやや上に短く湾曲した真っ赤な二本の角が生え、上げた腰にはピンク色の下着の上に細く真っ赤な尻尾が生えていた。尻尾の先端がハート型で、激しく上下に動く頭に合わせて左右に動くのだった。

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