第20話 ゆめ
「僕『ぼうけんしゃ』になるよ。怖い『まおう』は僕が倒してあげる」
いつかの時、どこかの場所。
世界には、泣いている女の子と、それをなんとかしたいと思った男の子のふたりだけ。
ただの夢だ。
脳が過去をベースにして記憶の整理を行っているに過ぎない。
夢の中にいながら、スペクトは、そう分析した。
冒険者になる。
魔王を倒す。
迷宮を踏破する。
夢だった。
破れた夢だった。
私は、
何より
訓練場には、足しげく通った。
再訓練もした。
それでも「迷宮への適性は無い」、そう判断された。
理由は、やはり
迷宮探索には、
それが『迷宮第一層でモンスターの攻撃に一撃耐えられるか否か』の分水嶺となるからだ。
一撃耐えられさえすれば、回復して立て直すことができる。
生き延びて経験さえ積めば、次からはもう少し強くなって、さらに生き延びる確率は増える。
だが、一撃も耐えられない人間にはそのチャンスもない。
それが迷宮での鉄則だ。
冒険者になる前から、迷宮のことを研究していた私には、それが痛いほど理解していた。
それでも迷宮に挑まずにはいられなかった。
仲間は……できなかった。
当然、何度も死んで、何度も甦った。
冒険者としての適性がなくても、迷宮への知識と知見があれば、活路は開ける。
そう信じて、戦って死んで甦って、戦って死んで甦って、戦って死んで甦って……。
戦って死んで甦って戦って死んで甦って戦って死んで甦って戦って死んで甦って戦って死んで甦って戦って死んで甦って戦って死んで甦って戦って死んで甦って戦って死んで甦って戦って死んで甦って戦って死んで甦って戦って死んで甦って戦って死んで甦って。
そしてついには信じられなくなった。
私は迷宮への知識と知見だけは買われて、今の仕事に就いた。
冒険者たちと敵対するすべてをプランニングする仕事へと……。
目を醒ますと、見慣れた自分の部屋のベッドの上だった。
「今日はアーガイン王城に登城する日だったな」
だからあんな夢を見たのかとは思いたくなかった。
会見する相手は現狂王陛下であって、彼女ではない。
「私はウソツキだから、な」
そもそも会わせる顔がない。
泣いている女の子をなんとかできる力は、もうない。
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