第12話 魔王様と運営ミーティング

『魔王ダーナ・ウェル 営業時間AM9:00~PM5:00 営業中』

ダーナ・ウェルの迷宮最深部の玄室の一つ。

迷宮運営管理部に、スペクトとダーナ・ウェルは戻ってきていた。


「よ~おっし、がんばるぞ~!!」

無駄にやる気を発揮する魔王様だが……。

「とはいえ、現状着手可能なのは、迷宮の報酬設計の見直しくらいです」

「う~ん、そっか~」

「それでは、一旦現状を整理しましょう」

「……あい」

途端にテンションが下がる魔王様。


「現在、冒険者が利用できる迷宮外のコンテンツは……」

・訓練場で『新規冒険者登録』と『転職』

・シェリグ・ゲイムの酒場で『依頼の受諾』と『情報交換』

・冒険者の宿での『宿泊』と『レベルの更新』

・ボッタクル商店で『鑑定』と『買取』

・アンクト寺院で『蘇生』を含む『状態異常の回復』


「……となります」

「う~んと……それで、みんなが困っていることは、お客さんぼうけんしゃさんが少ない?」

よし、魔王様でもなんとかついて来れているな。

「より詳しく言えば、こうです」


・訓練場で『訓練場に来る用事が少ない』と『錬金工房が無くて、錬金術師への転職ができない』

・シェリグ・ゲイムの酒場で『錬金術師関連の依頼が取り扱えない』

・冒険者の宿は『部屋が余っている』

・ボッタクル商店は『冒険者の財政難』

・アンクト寺院は『迷宮内で全滅している冒険者の放置』


確かにどれも冒険者不足が起因あるいは派生して起きている。

それだけに、根本的な解決は難しいな……。


「えっと……訓練場とシェリグさんのお悩みは錬金術師がいたら一気に解決なんだよね?」

!……そうか、何も各コンテンツの問題を一つずつ解決しなくても良いのか!!

「おっ、ひょっとしてあたしいいこと言った?」

「言ってません」

「……シュン」

声に出してシュンとしなくてもいいでしょうに。

咳払いを一つして続ける。

「……ですが、解決の糸口にはなりました」

「本当!!」

嬉しそうに近寄ってくる。

近い近い近い! 手を握ってくるんじゃありません!! うっ、いい匂いがする……。

私は魔王様を引き剝がして告げる。


「妙案があります」

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