第10話 やくそく

いつかの時、どこかの場所。

世界には、泣いている女の子と、それを慰める男の子のふたりだけ。


「ねえ、なんで泣いているの?」

「あたしね、いつか『きょうおう』にならなきゃいけないの、それが怖いの」

「どうして怖いの?」

「迷宮の『まおう』と戦わなきゃいけないの……それがとても怖い……」

「じゃあ、僕『ぼうけんしゃ』になるよ。怖い『まおう』は僕が倒してあげる」

「本当?」

「うん! 約束する!!」


アーガイン王宮の一室。

ロベルタ・リル・ナイム・アーガイン王女は寝台から身を起こした。

そばに控えていた侍女クヴィラが果実の乗った盆を差し出す。


ロベルタは盆から、果実のひとつを手に取り……。

「あンの……ウソツキが!!」

固い殻を持つ果実を片手で握りつぶした。

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