母性の愛情の陰と裏

第20話 覚悟を決めて

 休憩開始から15分が経った。大学教員の女性が自室から戻ってきた。


「せーくん、どう?」

「何がどうって?」

「話していけそう、ってこと」

「それなら、大丈夫。なんとか行けそうや。でもメル姉、さっきと服も明らかに違うし、やたら香水の匂いが・・・」

「どうも嫌な予感がしてね。せーくんの怒りがヒートするのを少しでも抑えるためにはどうしたらいいか考えて、あえて着替えてきたのよ。ついでに、シャワーも浴びておいたから、すっきりしたわ」

「あまり話にのめり込ませないように、って意図でもあるの?」

「そこまで考えていないけど、なんか、そうしたほうがいいなって思ったから」


 彼らは改めてルームサービスの珈琲を頼んだ。ほどなく、珈琲が運ばれてきた。


「ここは一息入れた方がいいわね」

「まあそうだろうけど、まさかメル姉・・・」

「ちょっとばかり、そんな意図もあるかもね」


 二人の男女は珈琲を飲みながら、軽く雑談を交わしている。


「いいよ。襲い掛かって警察呼ばれても困るし」

「大丈夫。絶対、呼ばないから。むしろ・・・」

「むしろ、何?」

「なんでも、ない。今日は、夜は大丈夫よね」

「何が大丈夫って? 変な解釈させんといて」

「そっちが勝手に変な解釈してない? 夜はお時間ある、って聞いているの」

「時間は24時間、昼も夜も人類みな平等に与えられているヤロ」


 作家氏独特のいささかひねくれた弁を、彼女は制した。

 メルさん、いささか語気が鋭くなっている模様。


「この鈍感男。御一緒しない、って聞いてるのよ!」

「そりゃ、是非。打上げを兼ねて。折角ならなんか美味いものでも」

「じゃあ、その前にしっかりお仕事ね」

「もちろんや。この話をし切らんと、仕事にならんがな」


 まだ朝8時にもなっていないが、この部屋は完全に仕事モードに。


「じゃあ、お願い。辛いでしょうけど、せーくん、がんばってよ」

「わかった。ほなメル姉、行くわ。覚悟は決まった」


 今度は作家氏が動画ボタンをクリックする。


・・・・・・・ ・・・・・ ・

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