第33話 日本政府からの連絡

「はい。お電話ありがとうございます。『導きと救済の聖光会』総合案内でございます。聖水の購入なら一番。面会のご予約なら二番。苦情ならそっとお切りください。なお以降、会話は録音させていただいております。ご了承ください」

 そっと、二番が押される。


「はい。お電話ありがとうございます。お立場が大臣クラスより上なら一番。それ以下なら二番。民間人なら、お近くの教会へ赴き、ご予約をお願いいたします。厳正なる抽選の結果、当選者には、ご連絡を行います」

 これは、連絡など来ない奴だなと思いながら一番を押す。


「『導きと救済の聖光会』総合案内でございます。明確に現在のお役職。並びにご芳名。今いらっしゃる場所をお伝えください。担当者が伺います」

「ああ。国土交通大臣。国方守くにかた まもるだ、今居るのは、首相官邸、四階の会議室だ」

「承知いたしました。担当者が参ります」

 そう言って、電話が切れた。


 すぐにノックがされ、党の局員が現れる。

「うん君は? 今総理と会議中で……」

 当然の疑問と受け答え。だが……


「失礼いたします。ご予約を取りたいというので伺いましたが、用向きがなければ、下がります」

 そう言って、彼は頭を下げる。


「ちょっと待ってくれ。キミは関係者なのか」

「はい。詳細は述べられませんが、小間使い程度のことはご奉仕できますので」


 大臣は、総理と顔を見合わせる。


 その三日後には、ヘリの中に居た。

「一体どれだけ。いや、今更か……」


 そう相手は、一介の新興宗教ではない。

 そんな事は分かっていた。


 小国とはいえ国家予算は計り知れず、関わる人間も多い。

 それが、最近は、一つの宗派から独立し、他との関わりもある。


 その証拠に、眼下に見える小島には、すでに幾つものヘリが到着をしている。

「約束は十二時だったよな」

「そうでございます。お話し合いがあるため、時間がずらされているとのこと」

「そうか」

 各国からの要人の移動は把握をしている。


 今日は世界中から、重要人物が集まっている。

 日本は、当事国なのに最後。


 島は、生えてからわずか一週間で、草木が茂り、自然豊かになっている。

 そこに、白い石造りの神殿が建っている。

 そう、三日前には看板しかなかった。

 その後も、工事関係者が来た記録はない。

 建物が、生えてきたという報告と影像のみ。


 それには、建物がいきなり生えてきて、その後、誰かが山に向かい大仰に手を広げると、山に木々が生え一気に岩山が山になった。


 広葉樹の森。


 山の中腹からいきなり水が湧き、滝が出来た。

 そんな光景が撮影をされていて、見た者の度肝を抜く。


「これは、魔法とはこんな事が出来るのか?」

「いえ。もっと小規模なものしか普通はできません」

 自衛隊の関係者も驚いている。

 彼らは、魔のもの達の能力試験や、聖水による能力試験も行っている。


 その彼らが驚く規模。

「あれは、彼らが本物出る証拠ですね」

「聖書に書かれている奇蹟か」

「そのようです」


 そうこの三日間。彼らは、動きに注目をして、ひたすら驚き続けた。


 到着をして、神殿に近づき驚く。

 建物は少し青い大理石のようだが、継ぎ目がない。

 つまり建物が、一つの岩だ。


 床には、ほどよい絨毯が敷かれている。

 窓からの採光と、柱による陰影。


 神殿と呼ぶにふさわしい。

 調度品など無用だと思える。


 柱には、金の装飾が施され、荘厳さもある。

「ここからは、担当者がご案内いたします。お待ちください」

 正面には、階段が三つ。二階に向けてかかっている。


「これは参道と同じか?」

「ええ、おそらくは、真ん中は神専用でしょう」


 真ん中の正面には光を模したレリーフが埋め込まれた大きなドアがある。


「しかし、絨毯にしろ誰が?」

「出入りしたものは、確認出来ていません」


 お付きの警備部の職員と自衛官。

 そして、行政関係が数人。


 大臣と総理。合わせて十名ほど。


「お待たせいたしました。こちらへどうぞ」

 行くと思っていた二階では無く、一階の階段脇を進んでいく。


 そこには通路脇に、重厚なドアが作り付けられた部屋が並んでいた。

 実はまだ、片側のみ。

 急遽整備し、直樹は疲れ果てていた。

 魔法による、ものの創造は意外と疲れるらしい。


「必要なものは購入します」

 と言った、神崎の言葉を、小市民の直樹は受け入れられず、頑張った。

 最初に作った絨毯は、らしいものはできたが、踏むとばらけた。


 ネットで構造を見て、組み直す。

 もう貧乏人の意地。


 ちなみに、ドアなどの意匠は、どこかのものをオマージュして、少しいじったのみ。そう、光のデザインを入れてごまかした。


 中の調度品も同じ。

 一個造れば、模倣は簡単だったようだ。


 大体は、絨毯の値段が円安もあり、高いという所から始まった話し。

 今輸入は高い。

 逆に聖水の値段が安すぎだと言うことで、為替も今は考慮している。


 さて、そんなこんなで、話し合いにこぎ着け、関係者だけで話を詰めた。

 そうここは、聖地であると日本に宣言をする。

 重要な事はそれだけ。


 そんな事を宣言をされることを、しらない。そう、かわいそうな人たちが、今会議室に入場する。

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