第32話 島の創造と騒動

 瀬戸内海。


 香川と愛媛、広島との交わりし海域。

 燧灘ひうちなだに、ある日突然、島が出来た。


 直樹はこれをする前に、悩んだし調べた。

 いや調べると、財産だから財務省? だが、瀬戸内海環境保全特別措置法とか色々あって、環境省や国交省とか色々ね。自治体も絡むようだし。

 埋め立ては規定されているが、自然に出来た場合はどうなるのだろう? 普通に国有地だろうが、俺達以外が上陸できなかった場合は、さて、どうなるのか?


 そんな、結論になった。


 自然隆起。天地創造ではないが、神による土地の作製。

 俺達以外は上陸も出来ないし、近くにも寄れない島。そう、神が導き、創りたもうた島。

 神域であり、俺達意外立ち入り禁止。

 どや!! と創ってみた。


「島が出来ました」

西之島にしのしまが、また噴火でもしたのか?」

 内閣へ連絡が入る。


「違います。これをご覧ください」

 ヘリからの映像。

 横に示された地図は、瀬戸内海を示している。


「火山じゃないな、地震性の隆起か?」

「不明です。上陸どころか、近寄れません」

「岩礁か? それならヘリで行けば。平地があるじゃないか?」

 そう、映された島は、奥側に小高い山がああり、裾野に平地。そして、湾がある。

 大雑把に言えば、三日月。四十平方キロほどありそうで、愛媛県の大島相当の広さがある。


「いえ。前にある浜の部分。ここは少し遠浅であり、その脇に岩礁はある様ですが問題ないとのこと。ですが、上陸できません。そしてヘリも近寄れません。突然風が吹き荒れます。そして海も同じくいきなり荒れます。そして、ここを見てください」


 写真がズームされると、見えてくる看板。


「なに? 『導きと救済の聖光会』神殿建設地。神の導きにより創られた土地。近寄るものには神罰が下る。注意。なんだこれは?」

「先日、『導きと救済の聖光会』については、バチカンの方からも公式声明が出ております。導き手となるものが集う会であり、メンバーは神の使いのみ。崇めよ。と言う事です。それでまあ、他の宗派も、此処の傘下となるようですね。その系統全部」

「日本での法人登録は?」

「団体としてはありませんが、代表の山上直樹という人物は、バチカンの正式な許可を受けた、省の長官クラスで登録されております。普通にVIPです」


 それを聞いて、非常に面倒なことだと理解をする。


「何とか近づき、話が出来ないか試してみろ」

 そう言われて、試したんだけどなぁと顔に出る。


「まあ、試しましょうか。色々と」

 国土交通大臣によって、お願いが出される。


 新島の調査依頼。

 海上保安庁と、自衛隊。

 学術チームの漁船。

 てんでバラバラな者達が、当該の島に集まる。


 双方で、依頼を受けた調査中だと言い合いがあったが、全部に正式命令が出ていることが確認される。


「何を考えているんだ国は?」

 それぞれが、そう考えながら、神聖で象徴的な数字である、海岸線から距離三百メートルの範囲に入る。


 そこまでは、何処までも晴れ渡る秋の空。

 箒で掃いたような巻雲けんうんが、ゆっくりと流れていく。

 揺蕩たゆたう。そう表現をするのがふさわしい、波による船体の揺らぎ。


 チャポンチャポンと音を立てる船縁が、いきなり音を変える。


 まず気が付いたのは、漁船団。

「こりゃまずい。先生方。引き返します」

「ああ、ターンは出来るか?」

「何とか……」


「先生方が急にターン。帰るようです」

「何か連絡でも入ったのか? うおっ」

 全長二十メートルの巡視艇と、百三メートルの測量船が急に揺れ始める。

「やばい引き返せ」

 見ても、目前の海は穏やか。

 それどころか、船の周り、白波の一つも立っていない。


「何だ一体?」


 そして自衛隊も。

 輸送艇と、そばにいて展開をしていた、エアクッション型揚陸艇。

 海面は静かなのに激しい揺れと、突風によりエアクッション型揚陸艇。

 双方共に引き返す。


「やはり駄目か」

 そう自衛隊は、幾度目かのトライ。


「おやしお型の喫水は、七百四十ミリだったな」

「多分一緒ですよ。見てください水中」

 それは、ソナーではなくカメラ。


 周りが平和で、船だけ揺れるおかしな現象。

 だがそれを取り付けたのを、後悔していた技官。


 水中で何者かの目と、視線が合ってしまう。

 ただし相手は、推定で片眼三メートル。

 そう、イメージでは海が見ている。


 水上バイクも試してみた。

 疾走し、そのまま数百メートル、真横に吹き飛ばされた。

 風の割に軽かったらしい。


 そして、潜水隊がアクアラングで、水中スクーターを用いた侵入を行う。

 そうそこで、海中の目と出会ってしまう。

「隊長、目が……」

「ああ、見えている」

「ぐっ。掴まれました」

「何に?」

「海水です」

「逃げられるか? 引き返す意思を見せてみろ」

「あっ、解けました」

「帰ってこい」

「りょ」


「そんな感じで、絶望的です。許可が必要なら取ってください」

「許可なあ? どうやって取るんだ?」

 紙が出てくる。


「『導きと救済の聖光会』総合案内。フリーダイヤル0120……」

 それを見て、顎で指示が出る。


 それを見て、この野郎と思ったが諦め。ダイヤルをする。



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フィクションです。

実際の団体等、全く関係ありません。

そして、おそらくはこの小説。大部分はギャグで、シリアスさはありません。

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