第20話 クレーマーオージィ伯爵
時間の
俺としては1年ぐらいたっている気分ではある……とりあえずはだ! 最後に古代種と別れてから特に大きな事もなく首都であるアールスカイへと着く。
これは俺にとっての朗報だ、そう毎回死んでいては俺の体、精神がもたん。
「ここが首都なんですね、エリカ初めてです!」
このやり取りですら数回目というのだから混乱しそうではある。
馬車から王城を眺めながらエリカが歓喜の声を出し始めた。
「いいか、くれぐれも問題は起こすなよ」
「はい、クラリスさんの言う事をちゃんと聞きます!」
一番聞いてはいけない相手のようなきがするが、邪魔なエリカを預かってもらうんだ、致し形無い。
いつものように城関係者入口にとまると、警備もかねて兵士が寄ってくる。その中で見知った女の顔が窓を軽くたたいた。
俺は黙って窓を開いてやる。
「エリカちゃん! 元気? 長旅疲れてたでしょ? 甘い物いる? 冷たい物でもいいよ?」
「あ、あの!」
「何?」
「お義父様が無視されて怒っています……」
馬車には俺とエリカが乗っている。
「あら、どこぞの伯爵様、いたの?」
「…………窓を開けたのは俺だ。それよりも今は兵士長。それとも第二王女が立場はどっちだ」
「どっちも。城に来るのはいいけど、来るって言ったり、来ないって言ったり、やっぱ来るって、途中の伝令係が泣き言いっていたわよ」
「ふん。情報は1日遅ければ役に立たない、良かったな伝令の必要さがわかって」
減らず口を、と聞こえてきたが無視する。毎回毎回相手してたのでは時間がいくらあっても足りない。
「では。エリカの事は頼むぞ。数日は城には帰らないつもりだ」
「はいはい。おつよい伯爵様の事だから心配はしないですけど……護衛は?」
「いらん」
俺はさっさと城の中にはいり裏口を目指す。
もう何度目か。
毎回同じ店を目指して1回もつけてないと言う、とんでもない呪いのかかった道を歩く。
数歩歩く事に左右上下を確認しながらだ、周りは俺を見ている、そいつらの顔さえも俺は見返した。
「お客さん、もしかして……」
「来たかっ! 今回の元凶!」
俺は声をかけて来た男をえり元を掴むと一気に詰める。先手必勝だ、なに偶然殺してしまっても今回は事故だ。
何もしてないを殺めるのは俺の信条に反するが、例外もある。
「うぐっくる、くる…………」
「なんだ。ゲイナーではないか」
俺は力を弱めると、ゲホゲホと咳をした、小太りの男は俺をみてくる。
「あんたは……」
「ゲイナーよ。お前がエルフを買い付ける。といって何年がたったと思っているんだ! 人体実験をするにいたっても、わざわざ若い女を寄こしてこなくていい、まずは病気の老人か使えない男で結構だ」
「伯爵様! ご無沙汰していますがこちらははそんな非道な事は。あの、ここは街の通り道ですし。エルフの買い付けを頼のまれた事は一度もないはずです、それにこのゲイナーあらぬ噂を立てられては、ここは一般の道ですし」
「む……ああっそうか、そうだな」
この時代でこいつに頼んだのは手ごろな娘を買う。までだ。エリカもこの男の紹介で買った娘ではある。
そうか俺がエルフを頼むのは早くて数年後、人体実験用の人間などもその時だな。
「所でうちの店に何が用で?」
「うちの店? ここは魔道具などを扱う、スタイナーの店だろ?」
「へえ、ですからスタイナーがウチの弟なんで……」
「……なぜ黙っていた」
「なぜって……そのオージィ伯爵様はその魔術などがお嫌いですし」
たしかにな。
「嫌いも何も、見てみないとわからないだろ」
「しかし、以前購入した本は読む前からゴミと……」
ああ言えばこういう奴だ。
「伯爵の言う言葉が嘘というのか?」
「い、いえ! お店へどうぞ」
俺は店の中に入る。
表向きは魔道具や占い、手品など商品があり。左奥が小さいが本を売っているのは俺が知ってる記憶と違いない。
さらに奥には隠し扉があり、休憩が出来るようになっている、そこに座り様々な奴と密談する事が出来る。
「ど、どうぞごゆっくり。手前にはまど――」
「好きに見させろ」
「はぁ」
奥のカウンターでは店主のスタイナーはフードをかぶっており、表情は見えない。あれで腕は確かなのは数年後にわかる。
俺は横を通りだまって隠しスペースの扉に手をかけた。
「ちょ!! オージィ伯爵様!? そ、そこは何もないですよ!? 壁です壁」
一緒に店に入ってきたゲイナーが慌て始める。黙って壁の一部をスライドさせると簡単に扉が開いた。
「変わってないな」
壁の向こうは中はテーブルとイスが数個ならべてあり、大きな窓が見える。窓は外から見ると壁になっており、内側から破れるようになっていたはずだ。
「ぬかせ、帝国の商人や魔術に関連する常連が来るのだろ?」
近くの椅子に座り足を組む。
ゲイナーが隠し部屋に入ると扉が閉まった。
「ど、どこで……いえ、まっとうな商売をしてますです。ま、まさかクラリス様から頼まれて」
奴隷商人が何を。と思ったが王国内では禁止はされてはいない。禁止されているのは悪徳な奴隷商人だ。
「クラリス? ああ……今の時代で帝国と繋がっているとしれば、潰されるな。クラリスの事だ拷問などせずに自らの剣で首を跳ねるだろう」
おそらくそこまではしないと思うがな、アレの事だ精々独房と思うが強めに言っておいて問題はあるまい。
「ひっ」
「何あんずるなお前が否定しようが帝国とこの店がつながってる事ぐらい俺は知ってる」
この時代の俺は無気力に暮らしていたが、帝国と繋がる人間は捕まる。と話は耳に入った事もある、一応は休戦中とはいえ敵国だしな。友好国となった時にはこの店は帝国魔導士協会の筆頭店として活躍するのだ。
「ま、まっさかー! そ、そそそんな事ありません。伯爵様! 美味しい話があるんですよ、新しい酒です」
ゲイナーは突然に半透明で甘い匂いのする酒……いやしびれ毒の入った酒を俺に勧めてくる。
「しびれ酒はいらんな……お前が飲んで……いや、たしかグラスの一部に解毒薬塗ってあったな」
毒見として飲ませてもグラスの一部に解毒薬。もしくは事前に唇にぬったりと回避方法は山ほどある。
「なななな!?」
仮に毒を受けるとだ。
しびれた奴を縛り上げ、恥ずかしい恰好をさせて服従させる、それが出来なければ人通り大きい場所に放置する。それも出来なさそうであれば殺す。
「はぁ……いいか? 俺は密告するほど面倒な事はしない。俺が帝国、もしくは魔術に関連する力を持ってる奴を探してる。俺の感が当たればもうそろそろ来ると思うだがな」
「…………本当に通報は……」
「くどい! 手付金だ。とにかく帝国の魔術、魔法、魔道具、もしくはこれだ! という詳しい奴、そういう客が来たら俺が会いたい。と言え。なに多少の金ならある」
俺は金の入った袋をゲイナーに渡すと、ごゆっくりしてくださえ。と小部屋から帰っていった。
黙って目を閉じてひたすらに待つ。
黙っていると日が暮れた。
緊急脱出用の窓の外は既に暗くなっている、俺はため息をつくとテーブルにある呼び鈴を鳴らした。すぐにゲイナーが入ってくる。
「何用で……」
「ギロチンだな」
「は?」
ゲイナーがまぬけな声を出してきた。
「当たり前だろ、俺がこうして待ってやってるのに、誰一人来ないのはお前が努力をしてないからだ。普通だったら俺が来ているんだ、帝国の商人の一人や二人連れてくるのが筋ではないのか?」
「む。無理です! オージィ様! そもそもスカイアールの首都に帝国の商人など、ただの人買いにそんな難しい事をですね――」
「だろうな」
別に俺とて本気で言ってるわけではない。
はっぱという奴だ。
「へ?」
「明日も来る」
俺は隠し部屋から出ると魔道具店を後にした。
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