第19話 ドラゴン・リーパー

 寝室にいた。

 確認後、自分の体を何度も叩く…………着いてはいる様だな。

 こんな気持ちは久々だ。


 殺されるのはまだいい! 嫌良くない! が、だ。今回も俺が殺される理由は。



「あったな……」



 俺の言葉は途中で止まった。

 最初は確かと言ったら流星を王都に落とされた。


 次は使といったら殺された。



「ああっ使い方を教えてくれてありがとうございます! だな! ふざけやがって」



 ある意味間違えてはいないが、口で説明しろ口で。

 そもそもなんだ、本当にこのセーブクリスタルの匂いを嗅ぎに来たのか? ああ、そうか。いいだろう! ここまで俺をコケにした奴はいない。



 と同じように部屋がノックされた。



 短く返事を返すと、やはりマーケティが「オージィ伯爵様来客です」と言ってくる。


 扉をあけ目線を合わせる。



「オージィ伯爵様……お顔がすぐれないようで、お酒もほどほどに……」

「全部俺の事だかまうな。それよりも休暇を与えたのだ。金を出す屋敷から三日ほど出て遊べ」

「い、いえ……それでいえばお客様が……『まずはしぬこと、おぼえた?』と相手は子供のようで、どうしましょう追い出しましょうか」



 クインだろ。

 やはりこれから起きる事を知っている。

 なぜだ。



「命の恩人……の子供だ。客間に通せ、いやまて……アレの好物は激からの食べ物だ。ドラゴンでも死ぬと言われている食べ物があったな。あれを出せ」



 俺の言葉を聞いてマーケティの表情が固まる。それはそうだろう、俺が生きていた中でアレを好きで食べた奴なんていない。

 使い方は拷問用が多い奴だ、



「お前は誰の執事だ?」

「っ!? オージィ伯爵様です!」

「であれば、黙って言う事を――」



 俺が最後まで伝える前にマーケィは部屋から出て行こうとする。



「待て。それでお前の今日の仕事は終わりだ、3日後」

「わ、わかりました」



 客間の前にいくとメイファがコロコロと食事を運んでいる所だった、ふたを開けると見た目だけは甘そうな赤い粒が皿に乗っている、このままではもちろん潰して汁にしても激辛だ。


 メイファも俺の顔をみてくるが、こいつは頭がいいのだろう。特に何も言わない。



「安心しろ。なに、ちょっとした嫌味返しだ。本気で食べさせる気などない」

「わ。わたしは別に」

「俺が運ぼう」



 メイファが表情を変えながら一礼して去っていく。客間の扉を開くと案の定クインが黙って俺を見ていた。



「くえ。毒は入っていない」

「ん」



 ふたを開け、赤い実を前に出す。

 クインは俺の命令どうりに赤い粒を食べる。



「食った! はっはっはっはは?」



 クインは紅茶を飲んで一息ついたのか俺を見てくる。



「こうして、しぬといぜんにもどれる」

「いやまて」



 なに? って不思議そうな顔で俺を見てくるが、不思議なのは俺だ。

 まさかメイファかマーケティがそっくりな実に変えたのか? その可能性もある。

 俺は実を一つ口に入れた。



 ――

 ――――



 俺は客間の扉を開ける。これで3だ。

 結果から言うと俺は死んだ、しかも辛みではなくだ。思わずクインに。と願ってしまったために部屋の中が水の底になったのだ。

 おかけでもう要らない。と言えずに溺死だ。ふざけておる。



「せつめいまだおわってない、かってにしなないで」

「知っとるわ!」



 何度俺が殺されたと思っているんだこの馬鹿。大体な俺は使い方を教えろって言っただけで、試せ! とは聞いてない。古代種だと? 何万年生きていたとしても馬鹿なのか?



「で、説明の続きはなんだ?」

「ん……おわり」



 終わりじゃ無いだろ終わりじゃ!

 駄目だ、誰か通訳が欲しい、ほしいが……この何でも聞くと何でも言う事を聞く奴は怖すぎる。


 俺を殺せって誰がかいうと俺は死ぬ可能性がある……まてよ。



「クインよ。今後俺に危害を加えるな、あと無関係な人間を殺すな!」

「…………やだ」

「うんうんうん。分かってくれれば……は?」



 俺がクインをにらみつけると、クインは無表情のまま俺を見つめてくる、その空洞のような目に俺の意識に突然危険信号が走る。

 にげろ、にげろ、にげろ、にげ…………。



「ふっざけるなあああああああああ!」



 はぁはぁはぁはぁはぁ。



「俺は伯爵だ! …………何も出来ないがな。だがされど古代種ごときに飲まれるような男ではない!」

「ん……ぱちぱちぱち」



 クインが俺をみては小さい拍手をしてきた。馬鹿にしてるのか。



「とにかくだ! 出来ないなら努力をしろ。色々と疑問が残る! まず最初に聞かせてくれ……なぜおまえは俺を知っている。もしかしてお前も何度も死んでいるのか?」



 それであれば少しは納得がいく。



「にてるけどちがう、べつじげんのわたしが、おしえてくれた」



 別時限の私と記憶を共有……一度復唱しないと子供が喋ってるみたいで理解するのに困るな。



「なぜ俺の言う事を聞く」

「することがないから」



 一瞬ぞわっとした。

 クインの表情が邪悪に見える。

 これが1万年も生きた感情なのか。自然に喉が渇き紅茶を飲み込む。



「…………まぁいい、そのなんだ。死者蘇生をしたい。やってく――まて! まだ何も動くな」



 俺が言い切る前にクインは手をあげたからだ。

 まだ俺は、。とも、。も何も言っていない。こんな場所でされれば、辺りはゾンビだらけになる可能性も高い、それだけならいいが範囲が広ければ、ここが中心視点となって世界が滅びる可能性もある。



「ん……」

「そう、そうだ。座ってくればいい……説明だけでいい」

「せつめい……くち……むずかしい」



 俺の口からは言い出しにくい。

 にくいが、ここでコレを逃せば二度とチャンスは回ってこない可能性もある。幸い客間には誰もいない。



「そうか……しかし困ったな。十数年前に死んだ、ある特定の人間だけを生き返らせることはできるか?」

「かんぜんたいはむり」



 …………そうか。

 7年ぐらいの研究ではまだ可能性もあったが、星をもふらす奴に直ぐにダメと言われるとは、中々に来るものがある。

 完全に復活は俺も無理と思っていた、ネクロマンサーでさえ生前の記憶があいまいな使い魔として復活させる。と聞いたからだ。


 しかし、古い書物では自らをゾンビにしたネクロマンサーがいた。とも言われている。

 それは生前の記憶を持っていたはずだ、その仮説を信じればいけない事はない。と思いたい。



「ざいりょうは」

「少し黙ってくれ……考えをまとめたい一人にさせてくれ」

「ん」




 あれだけの事が出来ながら死者蘇生は無理なのか……いや……まてよ? 100%は無理って事は何%ならいけるんだ?


 例えばだ、俺は未来に置いて下半身を麻痺する、魔法でなんとか日常的に歩けるまで回復したが、パーセンテージでいけば80%。

 99%まで出来るならそれはもう100%と違いないのでは。


 やはり一人では詰まる。か……ネクロマンサーの技術の事を聞いてみるか。あれは何%だ?



「クイン! ネク……」



 俺は振り返ったがクインがいない。

 …………まて、一人にさせてくれ。と、いったが帰れ! とは言っていない!



「あのクソ馬鹿古代種! どこにいった!」



 一人にさせろ。と言ったからか? 

 まて! 古代種の暫くは何年だ!? 下手したら何百年の可能性もある。俺は一生一人で暮らすのか?

 客間の扉開けてメルファを呼ぶ! 反応がない。



「おい! 誰がいないのか!? メルファ! マーケティ!」


 

 静かな廊下からは反応がない。



「くそ! エリカ! もうクラリスやキーファでもいい誰かいないのか!」

「お義父様、呼びました?」

「なっ!?」



 振り返ると客間の外。

 窓の向こうからエリカとメルファが顔をのぞかせている。小さい声であるが俺の名前を呼んだのだ。


 おれは平然を装い窓を開けた。



「何をしている……」

「何って……ええっと日向ぼっこです! 別にあのお義父様のお客人がどんな人なのかなーって。そこに偶然窓がありまして」

「エリカお嬢様、それはもう覗いてると言っているような物です」

「えっ! あの! 本当に違うんです」



 なるほど、覗きに来た。という所か。



「…………ほどほどにな」

「うえ! お、怒らないんですか」



 普段の俺なら激怒していただろうが、その誰もいないと思っていた時にいたんだ、それぐらいの恩赦おんしゃは認めようではないが。



「客人なら帰った明日から首都にいく……別に一緒でもかまわんが留守番を――」

「行きます!」

「オージィ伯爵様。エリカお嬢様が行くのであれば心配です。一緒について行ってもよろしいでしょうか?」

「かまわん」



 毎回毎回、魔道具店に行くときに邪魔が入る。ならばだ。邪魔な奴を今は合いたい、エルフでもいいクインでも言い、仮に誰も合わなかったら魔道具店にいけるしな。

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