第17話 古代種族
王都アールスカイの門が見えてきた。
門といっても城門ではなく、その周りにある城下町の門だ。
エリカの剣の訓練は結局押し切られる感じで許可を出した。いや出してしまった。
これで俺は殺される確率が上がった、俺自身何をしてるのかとひどく寝込みそうであったが仕方がない。
今回の目的は魔石売りだ。
王国では安く買いたたれるし、魔道具店にもっていくつもりだ。
いくら帝国と休戦中というが商人というのは横のつながりがすごい。俺も国で禁止されている奴隷を頼んだ事もあるぐらいだしな。
「エリカ、お義父様といく王都は初めてです!」
親がいなく孤児だった田舎娘が王都を知っていたらそれはおかしな話だろう。そういえば前のエリカはどうだったろうか?
一緒に王都に行く事などなかったのでこれが最初になるのか?
「それにしても良かったですね。お義父様の活躍が認められて褒美が出たのは」
「…………当たり前だ」
今回の鉱山での魔物の巣の騒動。
俺がいち早く連絡し、偶然休暇に来ていた部隊に応援を頼み、さらには私財をなげうって解決した。として賞状が贈られた。
まったく涙がでる思わず破り捨てようかと思ったほどだ。
あれだけ死んで私財を入れて作戦を失敗させた奴らのしりぬぐいをしたのに賞状一枚、これであれば無いほうがまだいい。
「まぁいい。今回は貸しにしておこう。でだ……」
「はい。ご迷惑はかけません! クラリスさんの所にいますので」
すでに迷惑な話だ。
まったく、最初に戻った時に追放しておけばよかった。と、心底思う。それであればこのアイテムがどうあれ殺される事は無かった。
結局条件や入手経路など調べないといけないので追放し損ねた。
「お義父様?」
「要件は」
「はい! 無いです」
はっはっはっは用件は無いのが用件か。
今すぐ馬車から突き落とそうか?
「あの、冗談です……」
「そうだな」
馬車を護衛する任のキーファが手続きが済みました。と馬車に戻って来た。貴族用の出入り口から城下町へと入った。
俺はさっさと馬車を降りて後ろを振り返らない、すでに落ち合う場所は決まっているので別れの挨拶も何もなくていいだろう。
「ま、また後でー!」
背後から声がかかる。
無視してもよかったが振り向こうかとおもったが片腕だけあげ挨拶を済ませた。
いくつかの角を曲がり段々と人影が減っていく。
「さて…………」
前回はここで変なエルフの女に襲われた。
あのエルフの名は……シル……シルフィーヌ? と言われていたか? 俺が立ち止まると体に小さい衝撃が走った。
何かにぶつかった。と下を向くと帽子をかぶった子供だ。
一瞬そのシルフィーヌかと思ったが、別人だ。
「じーーーーーー」
「………………謝れ」
「ごめん。じーーーーーーーー」
「………………」
「………………」
俺も子供も見つめ合ったままだ。
身長は凄い低いなエリカよりも低く14才ぐらいか? 耳を隠すように帽子をかぶっており、胸はあるので女だろう。
肌は色白でいかにも奴隷や貧乏娼婦の特徴で覇気がない。
誰かの声で『ロリコン伯爵』と脳内に再生された。
「…………体を売るつもりならいらんぞ」
「じーーーーーー」
頭が馬鹿なのか? 俺が一歩右に動くと、子供も右に動く。顔はまっすぐに俺を見ており目線も外さない。
左に動くと同じように左に動いた。
何なんだコイツは。
「ちっ! 俺の負けた。これで飯でも食え」
金貨がたっぷり入った袋を子供に押し付けると子供はそれを受け取らない。何がしたいんだこの子供は。
「わかった……要件をいえ。あれか? イタズラでは済まされないぞ」
「…………石の匂いがする」
こいつもか! 俺の直感が突然に警告を鳴らした。
首を回して辺りを警戒する、一瞬で首を切られては叶わない。
だ、大丈夫だ。突然襲ってくるような奴は見当たらない。
「石……? こいつの事か?」
俺はもっている小さい魔石を見せつけた。
子供は小さい石に鼻をつけて匂いを嗅いで「そうかも?」というと「…………要らない」と突き返してきた。
危なかった。
俺とてまた襲われる可能性はあるのは知っていた。なので本物と偽物を一緒に持ち歩き偽物を見せつけたのだ。
あのクソエルフは魔力の匂いとか何とかを言っていた気がする。そうなるとコイツもエルフになるだろう。見た目は子供だ……本当に子供かもしれん。
「お前、エルフか?」
「………………こだいしゅ」
こだいしゅ? 古代酒? 酒か……いやまて……種!? エルフの中でも上位のアレか? 見た目は10歳ぐらいにしか見えない。
俺が長年魔石の研究をしても1回しかその名前を見た事しかない種族だ。
数が少ないエルフ、さらにその上にいるエルフ真祖と呼ばれている集団だ。エルフが千年生きる種族とすると、万を生きると俺が読んだ古文書には書かれていた。
その力は海を割る事が出来る。とか、空から星を降らす事が出来る。不老不死や……時を遡る事が出来ると言わている。
俺が長年研究していた事にもつながる話で。
「…………かんちがい、ばいばい」
俺が立ち止まっていると、小さい言葉を話して横に通り抜けていく。
とっさに俺は左腕で古代種という子供の手を握った。
「…………なに?」
「本当に古代種なのか? 古代種といえば星さえも落とせると……証明は! いや、出来るわけがないか。そうだ……その本物であれば一つ助言をだな――」
「…………みたいの?」
そんな恐ろしい事が出来るのか? 子供だぞ? 俺を馬鹿にしてる頭が馬鹿な子供かもしれん。
「……見たい、できるな――ら……」
「…………コーカヴ」
俺の掴んでない右手を上空にあげ意味のない言葉をいう子供。
その瞬間空に浮かんでいた星が流星のように降ってきた。
城は崩壊し、建物は吹き飛ぶ、人の悲鳴、爆音、怒鳴り声は笑う音。
俺が経験した戦争ですらこんな地獄のような光景は見たこと無い。
「おま――」
「これが…………しょうめい……今わかった……うそつきのおじさんだね」
背筋が凍るというのか、俺は黙ってその目を見つめて動けなくなった。
誰がか危ない! と叫んだのも他人事のように聞こえ俺は意識は切り変わった。
――
――――
「ハァハァ…………!!」
俺は飛び起きて辺りを見回す。
外の景色は夜で星空が綺麗だ……あの星が全部降ってくる。そう思わざるおえない魔法を見た。
「マーケティ!」
部屋を出て呼び鈴を力の限り振る。
近くの部屋で寝ているはずのマーケティが慌てて飛んで来た。
「な。なんの御用でしょうか」
「…………王都は無事か?」
「無事?」
「王都は無事か! と聞いているんだ、崩壊したとか襲われたとかな……」
「無いと思いますが、クラリス様達の書状ではそのような事は書いておりませんでしたが」
戻った。
戻ったのか……過去に。
何日まえ……最近は何もないから10日前になるのか。
「そ、そうか。そうだよな! 夜分の命令は終わりだ………………対価は払わなけばな3日ほど休日を与える」
「えっ?」
「気にするな、俺も1人になりたい時はある」
命令を伝えると部屋に戻った。
しばらくはその場にいたのだろう、足音が遠くなるまで耳を澄ませ、俺は自然に息を吐いた。
「助かったのか……」
あの子供の目、それに……『今わかった……うそつきのおじさんだね』その言葉がよみがえる。
なぜ俺はあの時に手を伸ばしたのだ、そして、なぜバレた……。
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