第14話 叫べ!オージィ伯爵
椅子に座り眺めている。
俺には出来る事はないからな……それは横にいるエリカも同じことで興味深く鉱山の出入り口を見つめていた。
…………何のための時間だ。
俺としては時間を無駄に過ごしている感がある。
爆発が起きると出入り口からは粉じんがでた、その後に叫び声や剣をが固い物に当たる音。兵士たちが交代で鉱山内に入る姿が確認できた。
「オージィお義父様、あれなんでしょう?」
「ん?」
先ほどからけが人が増え出入口が騒がしい。そう思った瞬間兵士数人が吹き飛んだ。黒い物体が見えると、「オージィ伯爵。逃げてください!!」 とフェイスの声が聞こえた。
確認すると顔から血を流しており怪我をしてるのが見て取れた。
黒い物体は広い場所でぐるぐると回ると、その動きを止める。
魔物。
そう断言でるのは大きさである。あちこち傷だらけの人間サイズのコウモリは大きな羽を広げて
羽ばたくも傷があり飛べないのだろう、その風圧で目を細めると、突然その魔物は俺に突進してきた。
「ちっ!」
俺だってそうやすやすとやられるわけにはいかない。
避けようと動く、この場所ならあたら――うぐっ!
誰かに突き飛ばされた。
地面に足がつき中態勢になると顔をあげた。
「オージィお義父さま! あぶない!」
「おまっ――」
危ないのはお前のほうだ! そんなに俺を恨んでいるのか!?
「オージィ! 前っ!」
クラリスが俺の名を叫ぶ声で我に返る。
前を向くと既に牙が見えており俺の視界が一気に暗くなる。
ゴリっと嫌な音が聞こえたかと思うと――
――
――――
「6回目の死亡。ここまで来るともう神に選ばれたとしか思えないな」
言葉をはき捨てる。
俺の手にはセーブクリスタルが握られており、これからクラリス達が鉱山に入る所まで戻って来た。
必死に首や頭を触る。
「ちゃんとついているようだな…………」
クラリスに文句をいってやろうと周りを見るも、すでに最後の兵士が鉱山内に入った所だった。
先ほど座っていた場所にエリカが座っており、俺が来るのを待っているのだろう……どうする? 今から鉱山に走り作戦を止めるか? お前の作戦は失敗して俺が死ぬからやめろ! と?
無理だな。
クラリスの事だ、慎重にはなるだろうが。今度は別の事で俺が死ぬ予感しかない。
ふう……………………やりたくない。
やりたくはないが。
俺は近くにあるモノを掴んで椅子に座る。エリカが俺の行動を不思議に思っているが、前を見て置け。と、だけ伝えておいた。
「わかりました!」
「返事だけはいいんだな……」
「あの、エリカ何か失敗を」
「いや。まだない」
良かったです。と俺との会話を続けようとしたので、俺は会話を打ち切った。
小さな爆発音が聞こえた。
地面が小さく揺れると隣に座っているエリカが腕を前に出す。先ほどと同じく怪我をした兵士が多くなっていくと……。
「オージィお義父様、あれなんでしょう?」
「…………少し離れていろ」
「はい?」
黒い物体は広い場所でぐるぐると回ると、その動きを止める。
魔物。あちこち傷だらけの人間サイズのコウモリは大きな羽を広げて
「知ってる」
羽ばたくも傷があり飛べないのだろう、その風圧で目を細めると、突然その魔物は俺に突進してきた。
「ああ、それも知っている」
エリカが「オージィお義父さま危ない!」と叫んで駆け寄ってくるが距離を取っていて本当に良かったと思う。
俺の所までは距離がありぶつかる事はないはずだ、さっきはそれで回避したはずが命中したのだ。
「オージィ! 前っ!」
次にクラリスが俺の名前を呼んだのを確認し、背後に隠し持ってきたツルハシを両手にもち一気に振り下ろす。
「どちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! がああああああああああ!!」
手には特有の感触が伝わり俺のツルハシは地面へと突き刺さる。
襲ってきた魔物はツルハシによって頭を貫通しており、ピクピクしながら絶命した。
「はぁはぁはぁはぁ…………」
知らずに汗をかいており、それを手で拭う。
クラリスが横に来ており剣を抜いていた、魔物の頭に突き刺すと俺にタオルを渡してきた。俺は無言で掴むと顔まで飛び散った血をぬぐう。
「ええっと…………オージィ。あのその。まぁ結果オーライ!」
耳に聞こえるのはクラリスの声だ。
ふっざけるな! 結果オーライだと? 俺は一度死んだんだ、死んだ! お前は死神か? お前が来てから俺は2回も死んだんだ。
どう責任とるつもりだ。 その癖にお前達のお土産代まで出せって? 金ならある。別にいいだろう。
だがな――
「気にするな」
俺は言いたい事を我慢してタオルを返す。
ここで俺が先ほどの文句を言えば事情を聞かれるに違いない。そんなアイテムどこで、だれか、どうやって? など。
最後には貸して! 返すから。といって持って行かれそうだしな。
「あ。ありがとう……」
「…………いいか、気にするな! ミスは誰にでもある」
「オージィ伯爵大丈夫でしたか?」
走りながらしゃべってくるのは双剣のフェイスだ。
「すみません……これほど魔物がいるとは。おそらく巣のボスですね……不覚を取り申し訳ございません」
「気にするな。それよりもこの死体は俺が買い取る」
「「え」」
クラリスとフェイスの声がかぶった。
「オージィお義父様!」
「ぐっ!」
気づいた時には回避不能だった。エリカが俺の腰に抱きつき俺の事を心配して……るのか? これも演技かもしれないな。
「離れておけ、伯爵家の娘である以上もっと冷静になれ」
「は、はい……」
「あの親子のいいシーン台無しにして申しわないけど、魔物の標本でも作るの? 悪趣味すぎるわよ」
「そんな趣味はない」
俺は魔物の死体から赤ん坊の手ぐらいの石を拾い上げた。
頭の部分に入っていたらしく脳があった場所に埋まっていたのだろう。
「宝石……いえ、違うわね。魔石……えっ魔石!?」
「自分で言って2度も言うな」
「クラリス隊長?」
事情を知らないフェイスは不思議そうな顔だ。
「ああ、ごめん。アールスカイ王国では魔石はとても珍しいのよ。昔からこの土地には魔力が少ないらしく、お陰で大きな魔物も少ないんだけど……うわー原石ってそんな色なのね。でもよく魔石があるってわかったわね」
後年になってバンバン発掘されるからな。
帝国と和解後に一気に技術が伸びる。
「…………なに、強い魔物には魔石が生成される。と俺も書物で読んだからな」
「ねぇそれ王国で買わせてくれない? 500! いいえ6……700だすわ!」
「考えておく」
売るわけがない。
売るわけがないが、ここで売らない! と断言すると、この女は何を言うかわからない。
「うわ。絶対に売らない顔してる」
「考えるしか答えられないな」
ふう……まぁ何とか終わりだ。
やはり前と同じく鉱山区魔物が出た場所はしばらくは封鎖だろう。
これは過去……いや未来になるのか? それと同じだ。
数年は別の穴で素材を堀をするか。
「さて! 諸君作戦は成功よ!」
成功してないがな。
「文句ある?」
「何も言ってない」
クラリスが場を仕切り、撤収の準備を始める。怪我をした者もいるし、俺はもう必要ないだろう。
フェイスが俺の顔をじっとみている。正直気色悪い……いうて俺は男を抱きたいとか男色趣味はない。
「オージィ伯爵! 俺と一晩付き合ってください!!」
怪我の治療を指揮していたクラリス。走り回っていたキーファ。義娘のエリカ、その他もろもろの人数が立ち止まり一気に静かになった。
「…………カミングアウトする。その勇気だけは認めてやろう。断る」
「正直試したいです!」
「…………そのなんだ。他にも隊員はいるだろう。それにクラリスにでもたのめ、案外極楽に連れて行ってくれるかもしれないぞ」
「ちょ! オージィ!」
「僕はオージィ伯爵じゃないとダメなんです! 一度でいいから剣の試合を!!」
「なんだと……」
俺が周りを見ると、周りの人間は一斉に目をそらしだす。
そうだろうな、誰かどう聞いても……。
「引き受けてください!」
「だからこと――」
「いいわよ!」
俺の代わりに返事するクソ生意気な女をにらみつける。
「こわっ……実は最近貴方の評判悪いのよね」
だからなんだ。
評判が悪かろうがきちんと収める物は収めている。
「それが?」
「フェイト君が勝ったら、その魔石ちょーだい。それもって帰れば貴方の王国の評判あがるから」
思わず目まいがした。
何を言っているんだコイツは、これは俺が何度も死んでようやく手にいれた魔石だぞ? 小さいが売る所にうれば1000枚は下らない、それよりも加工すれば、もしかしたら小さい火の玉ぐらいはうてる魔道具になるだろう。
「断わ――」
「いいの? 評判が落ちて領地没収となったら。没収までいかなくても数年間監視ぐらいはありうるわね」
痛い所をついてくる。
俺が使えない領民を魔物と一緒に埋めた時は監視されたからな。領地から出る事はもちろん町にいくのにも許可性だ。
「…………勝負だけだ。勝ち負けは関係なしにしろ」
「だって、良かったねフェイス君」
「クラリス隊長……ありがとうございますっ!」
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