第11話 二度目の前夜

 些細な変化はある物の大きな変更はない、俺はそう確信すると鉱山に入る前に俺はクラリスを呼び止める。



「何? まださっきの事を怒っている。…………とか?」

「違う! お前が持って来ている最新型の手投げ弾。それを小屋に置いていけ」

「え? …………なんで私が持ってると? もしかして占い師に転職した?」



 クラリスが俺をにらんでくる。

 何でも何もお前が鉱山の中で落としたから俺は爆発に飲まれて死んだんだ!

 繰り返す事、今度は5日前だぞ! 気が狂いそうになるのはこっちだ。



「そもそも、下水の破損もそうだしフェイスの双剣の事も知ってる、何か隠してない?」



 感だけはいい女め。

 まぁいい、無駄に5日間も黙っていたわけじゃない。それぐらいの言い訳は考えてある。



「…………お前がここに来るんだ、何かあると思ってカマをかけただけだ。本当に最新式の手投げ弾を持ってくるとはな……なんだ軽量化に成功したのか、常日頃新兵器を楽しみにしている癖は治ったのか?」

「怪しいわね……そんな癖ないし。まぁいいわ、聞いてよ! このフォルム可愛いと思わない」



 思うわけがない。



「前回のよりも細長になったのよ。ピンを抜いて下にあるボタン。これが地面に落ちれば爆破。耐震性の問題も鍛冶と魔道具の実験もかねて火薬じゃなくて何を使っていると思う?」



 魔石だろ! と、思わず正解を言いそうで辞めた。

 下手に正解を言うとまた何を言われるかわからん。



「泥でも詰まっているのか?」

「爆破しないじゃないの! ま・せ・き。一応いまは帝国と戦争やりあいしていても休戦中に近いじゃない? あっちの技術を応用して魔石に火の簡易魔法を組み込みとかなんとか、専門じゃないからわからないけど。その試作1号がこれ。以前のより安全で馬に乗っていて落としても爆破はしなかったわ」



 ほう。俺が知らない技術だ。

 作った奴が気になるな。



「誰が作った?」

「そんなの私に聞かれても」

「とにかく、狭い鉱山で落としたら危険には違いない」

「そんなミスはしないわよ。聞いてた? 以前よりも安全性が増して――」



 そんなミスはするんだよ!



「うわ、その顔…………そこまで怒る事ないじゃない」

「いや、すまんな。俺だけならともかく隊長であるクラリスや領民に怪我があると心配だからな」

「えっ…………あんがい優しいわね。わかった置いて行く…………」



 小屋からキーファが出て来たので理由を言って手投げ弾を預かってもらう、そしてそのまま地下の魔物が出た場所で歩いて行った。

 別に道案内されなくても、すでに道を知っているが一人で行くわけにもいかない。



「内側からカリカリと音がするわね」

「へえ。最初に発見したのはごく少数でしたが数が多いらしく、許可が出たので埋めてはみたんですが中の空洞が埋まっていないらしく……」

「埋めるのが簡単そうだけど、そもそも埋まっていた魔物の巣を見つけたって事よね。横穴もありそう」



 だろうな、俺もそれは考えていた。だからこそ全部埋めてしまえという事を感じたのだ。



「少し離れて爆破し、出てきた奴を倒す。出来るか?」

「出来るか? と言われれば出来るわよ」



 それでいくか。



「で…………それはいいんだけど。一応聞くけど今回の討伐するにいたっての資金は? 無いとは思うけど死者が出た場合の――」

「こちらが払う、町にいる隊員の宿泊費なども込めてだ、お前以外が死んだ場合の見舞金もだす」



 それぐらい安い物だ。

 俺の考えが正しければここに埋めた魔物からは魔石が数個取れるはずだ。それを……王国はまずいな。帝国にでも売れば良い金になるのは間違いない。



「あら、私のは出ないの?」

「………………本気で言ってるのか?」



 とってもじゃないが、騎士隊長としての見舞金は出せても王女としての見舞金は出せない。と、いうかだ。



「冗談よ。好きで騎士になったのだもの、パパもわかってはいるわ」



 クラリスは片手をあげてひらひらと返事をする、キーファの案内で鉱山から出ると屋敷へと戻る事になった。



 馬を操り自宅へ戻ると、なんと! 義娘のエリカが玄関で待っていたのは驚いた。

 あれほど俺にかかわるな、と教え13年間で初めての事だろう…………いやまて、まだ教えてないのか?


 とにかく、そのまま客間で見て来た事を話す。場を仕切る感じでクラリスが、で! と大きく喋り注目を集めた。


「フェイス君。先ほど言った感じで遠くから爆薬で爆破後、各個撃破。鉱山は狭いから入口に誘導するように道を作って――――」



 まったく第二王女にしておくのは勿体無い。



「って事で作戦は理解した? 宿にいるメンバーにも伝えて。あと飲食は全部オージィ伯爵もち。成功した暁には飲んで飲んで飲みまくれるわよ」

「それは凄いですね。いいんですか? オージィ伯爵」

「かまわん。金ならある」

「まったく、それだけあるなら王都の部隊にも回して欲しいわ」



 クラリスの冗談にフェイスが困った顔をして席をたった。作戦を残ったメンバーに伝えるためだろう。

 それでは、といって客間から消えると残ったのは、俺。エリカ。メイドのメイファ。執事のマーケティ……とクラリスである。



「いやまて、お前は何で帰らない」

「え?」



 当然のように残るので俺の勘違いか。と思ったが勘違いではない。



「エリカちゃんと一緒に泊まるって約束したんだけど?」

「…………そうなのか?」

「エリカ初耳です!」



 少し変な間があった後、メイドのメイファと執事のマーケティが手配してきます! と部屋から出ていった。これではどちらが格上七日分かったものじゃないな。

 文句を言うと「気品があふれ出るのはしょうがないわね」と勝ち誇った顔をしてくるので腹立たしい。



 声にだして嫌味をいうが「伯爵はうつわがちっちゃいわねー」と、返事だけが帰ってくる。

 そこまで言うのであればもう言える言葉もない。



「勝手にしろ……作戦だけは失敗するな。俺はもう寝る」

「またねー」

「え。あの……オージィお義父様」



 エリカの助けを求める声で一度立ち止まる。



「その、諦めろ」

「ええええ!?」



 エリカの叫び声を聞きながら客間を後にする。

 階段を上がり寝室へと入り、上着をかけると椅子に座り込んだ。



「ふう……疲れた」



 腰のポーチからセーブクリスタルを取り出し眺める。うっすらと光っており、その美しさは俺が13年間みた魔道具の中でも一番の出来だろう。



「まさか………………呪われたアイテム……ではあるまいな」



 これを手に入れてから俺は何度も死んでいる。

 呪い。魔法や魔術なみにインチキが多いもの、「呪われたアイテムを手放すべきです」と高価なものを回収し金銭を得る物もいる。俺はその手の事は大っ嫌いで領土には教会は許可しても呪いのアイテム回収は禁止した。


 呪いかどうかを見極めるには大きな教会にいくしかない、すなわち。



「また王都か」



 この事件が終えればいくのもいいかもしれんな、さすがにあの狂ったエルフも街から出て行っているだろう。

 こんな素晴らしいアイテム使い方次第で王にもなれる。別に王になりたいわけじゃないが不条理に死ぬのだけは避けれる。


 問題は毎回死なないといけない所ぐらいだ。

 もっと詳しい事を調べないとだ、回数制限があったとしたら最悪だ。俺は既にほど死んでいる。

 少なくとも13年後にの罠にはまり死ぬ。と言う事は避けたい。いや避ける事が出来た。


 こんな時は深酒でもしたい気分であるが食堂まで遠いのと客がいるので飲まない事にして無理やり寝る事にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る