第34話 高林、何故引っかかった?

うちってさなんか武器になるような物ってある?」


 トレーニング後のシャワーを終えた俺が台所でプロテインの準備をしながら家族にそう問いかける。


「物置の木刀」

「カナメのコレクション」


 すると父さんと母さんから的外れな答えが返って来た。


「あー、壊れても良い奴で」

「あんたの木刀」


 俺が補足するとなおも姉ちゃんがさらにかぶせてくる。


「て言うかカナメ、お前武器とか作れる様になったんじゃ無いのか?」


 俺がプロテイン片手に食卓に着くと父さんは首をかしげながら聞いてくる。


「素材がそろって無いからまだ作れない」

「あー、そうか材料か」


 父さんは自分の疑問が解消されたら納得したのか朝食を続行する。


「カナメもサンドイッチ食べる?」

「食べる」


 母さんは武器うんぬんの話に興味が無いらしい。


「武器は壊れたりがあるから武器系のスキルが無いと買うとそんなのね、サブスク方式も結局高く付きそうだし、そんであんたは武器を作る素材を集める武器が必要って状態ね」


 姉ちゃんはスマホを操作しながら俺の現状を把握していく、もしかしたらもはや俺より姉ちゃんの方がダンジョン関連の情報に詳しいまでありそうだ。


「やっぱりあんたの木刀持って行けば解決じゃない」


 姉ちゃんの知能とインターネットの無限の知識を持ってしても、俺の納得いく答えが返ってこない。


「お父さんが昔友達に貰ったゴルフ道具は? 結局貰ってから1回も使ってないし、ねお父さん」


 母さんがサンドイッチを俺の前に置きながら結構良い案を出してくれた。


「ん? んー? もらい物だしなー」


 多分、今の今までドライバーやら何やらの存在を忘れて居た父さんは無駄に渋る。


「じゃあネットで売ってそのお金で武器買ってあげれば?」


 姉ちゃんは助け船を出してくれる。


「ええー、売るのも悪いし……まあ武器としてでも使って壊す方がゴルフクラブも本望か」


 正直姉ちゃんの提案の方に傾いて欲しかったが、父さんは謎の結論を出した。

 しかしまあとりあえず武器になる物は手に入る事が決まったので良しとしよう。


「まあ、ダンジョン使って稼げるようになったら好きな武器でも魔法でも買えば良いじゃ無い、じゃあ私今日遅くなるから晩ご飯要らない行ってきまーす」

 

 姉ちゃんはそう言うといつもより早く大学に向かった、俺もサンドイッチをプロテインで流し込む荒技をこなし席を立つ。


「ごちそうさま、じゃあ放課後ダンジョンに行くからゴルフクラブ持っていくよ」

「ああ、えーと確か物置の左端にキャディバッグごと入れてあるから好きに使え」

「ありがと、行ってきます」


 俺は正直ゴルフクラブ側からしたらネットで売られてゴルフに使われた方が本望なのでは無いか? と言う疑問がわいてきたが口に出すと話がややこしくなりそうなので大人しく学校に向かう。




「なあ明松、握手しようぜ」


 教室に入り自分の席に着くや否や高林と喋って居た足立がニヤニヤしながら右手を差し出してくる。


「おう」


 俺は一瞬右手で応じるフリをして左手で足立の右手の甲をつかみ思いっきり握る。


「痛でででで! やめろバカ放せ」


 足立は手を振り払おうとして暴れるが俺はさらに両手で足立の手を破壊しにかかる。


「おい、明松、両手は駄目だって危ないから」


 高林が消極的に止めてくるのでそこそこのタイミングで足立を解放する。


「痛って、ああー折れるかと思ったお前な急に何すんだよ」

「うっせえなどーせ、レベル上がった力試しで俺の手握り潰すつもりだったんだろ、魂胆が見え透いてんだよ」

 

 足立は図星を突かれ一瞬たじろぐが取り敢えずで言い返してくる。


「そ、そんなつもり無かったし!」

「あっそ、どっちでもいいや」


 別に足立が本当に握手したかっただけでも俺に後悔はない。


「こんのー明松ー」

「やめとけ足立、お前が悪い」


 高林はさっきの足立の手口に引っかかったのか右手をさすりながら足立をたしなめる。

 足立のアドベンチャーズハイ早くどうにかならねーかな。


「あーもう、お前とはパーティー組んでやんねー」


 足立はへそを曲げた様子でそう言うとそっぽを向いてこちらをチラチラ見てくる。


「いやそれで、悪かったー、とは成んねーよ」

「いや、成れよ薄情者、せっかく週末に高林とパーティー組むから誘ってやろうと思ってたのに」

「残念ながら俺はもう他のパーティーに誘われて……返事忘れてた」


 俺は焦ってポケットからスマホを取り出し、杵島への返事を考える。

 できるだけ媚びてない対等なビジネスのようなそんな返事を。

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