第18話 安眠効果!?

「ニーナ君の膝枕……ふむ。しかし、君はアルス君よりも小柄だから、いささか……」

「カレン様! アルスの脚は枕に出来るのに、ニーナの脚は枕に出来ないなんて、あんまりですっ!」

「わかったわかった。ではニーナ君の脚も試してみるから、泣かないでくれ」


 そう言って、やれやれと言った表情のカレンさんがお店に置いてあるベッドへ。

 その一方で、ニーナちゃんは先程までの悲しそうな表情から一転して、笑顔でベッドに座った。


「カレン様、どうぞ」

「では……」


 カレンさんがニーナちゃんの足に頭を乗せて目を閉じ……起き上がる。


「うん。ダメだな」

「えぇっ!? どうしてですかっ!? ニーナの脚はフワフワでプルルンなのです! きっと触り心地が良いと思うのです!」

「そのフワフワがね。おそらくニーナ君は、先ほど風の精霊の力で飛んでいたように、普段あまり歩かないのではないかな?」

「そ、そうですけど……」

「私は柔らかい枕はダメなんだ。アルス君の膝枕のように、弾力のある枕を欲しているんだ」

「そんなぁぁぁっ! せっかくニーナの脚でカレン様に眠っていただき、イタズラ……じゃなくて、寝顔見放題だと思ったのにー!」


 いやあの、ニーナちゃんはカレンさんに何をする気だったのだろうか。

 それから、カレンさんも幼いニーナちゃんの脚に頭を乗せるのは忍びなかったんじゃないかなと思う。

 たぶん、九歳とか十歳くらいのニーナちゃんの脚に一晩中頭を乗せるのはちょっとね。


「うぅ……カレン様! アルスの脚より、絶対にニーナの脚の方が気持ち良いですよ!」

「いや、実際に寝比べたじゃないか。……そうだな。そうまで言うなら、ニーナ君もアルス君に膝枕させてもらうといい。アルス君の脚は良いぞ」

「……アルス。早くベッドに座りなさいよっ!」


 ニーナちゃんに呼びつけられ……まぁこれで納得してくれて、カレンさんが困らなくなるならと、ベッドに座る。

 そこへニーナちゃんが頬を膨らませながら、僕の太ももに頭を乗せ、目を閉じた。

 ……はっ! 今ならウサギ耳を触り放題ではっ!?

 いやいや、勝手に触るのはマナー違反だろう。

 でも、モフモフ……モフモフが気になるっ!


「くっ! アルス君がニーナ君の顔を凝視している! やはり妹系が好きなのか。だがアルス君は、私の胸に顔を埋めていた。ニーナ君には埋める胸がないから、まだ私も勝てるはずっ!」

「いや、カレンさんは何の話をしているんですかっ!?」

「アルス君が好きな、私の胸の話だが?」


 ご、誤解が酷いっ!

 いや、そのやらかしているだけに否定出来ないんだけどさ。

 それよりニーナちゃんは、そろそろ起き上がってくれないかな?

 枕作りの続きをしたいんだけど。


「……ニーナちゃん。そろそろ……」

「……すぅ……」


 ね、寝てるっ!?

 僅か数分どころか、数十秒しか経っていないと思うんだけど。


「あー……アルス君の膝枕は最高だからな。気持ちはわかる。アルス君の膝枕には安眠効果があるからな」

「あの、流石にそんな効果はありませんけど……」

「まぁ今のは冗談ではあるが、それくらいアルス君の膝枕は寝易いのだよ。それに、ニーナ君はエルフの森から来たのだろう。このサーガの街まではかなり遠かったはずだ。その疲れもあったのだと思うよ」


 なるほど。王女様は昨日からニーナちゃんを迎えに行っていたみたいだし、それだけの距離を移動してきたというのなら、疲れていてすぐに寝てしまうのも仕方ないだろう。

 出来れば起こさずに寝かせてあげたいのだけど……僕が全く動けないよっ!


「アルス君。こんなに幼いニーナ君が眠っているんだ。出来れば起こさずに……」

「そう……ですね」

「うむ。と言う訳で、私も一緒に眠らせてもらおう。ちょっと、こちらのベッドを借りるぞ」


 そう言って、カレンさんが別のベッドを横に並べ……さりげなく店のドアに鍵を掛けて、僕の太ももを枕に眠りだした。

 ニーナちゃんの頭が小さいから出来る事だけど……えっ!? まだ夕方なのに、二人ともこのまま寝ちゃうのーっ!?

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