15
手すりに掴まり、胸に添えた手で呼吸を整えて、首を振る。
急な血圧変動に、目の中で光は飛び回り、手足の先もしびれている。
それが回復する間、しびれはそれぞれ集まり合い、待ち針の先のように自分の制服をちくちく刺しているような感じがした。
小児病棟で、実の姉のように慕った
現に、ひとりで用は済ませた。そして、手すりに掴まり立ちし、スカートをなおし、こうして便座に腰かけなおしているのだから、この手すりさえあれば今日は立てる。
なんなら、しばらくなら車椅子を押して歩くことだってできる。自分なりに体調が今日は良いだけに、知り合ったばかりのふたりの手を「あのう!」と語気荒く呼びつけたあと、当たり前の権利の行使なようにわずらわせることのほうが、なんだか申し訳ない気がする。その状況は絶対に避けたい。だから自然かつ爽やかにいきたいのだが……
彼の顔が、うなじに近づくと考えるだけで、また顔が熱くなってくる。
だからなのか、彼女からすこし離れた位置に停めた車椅子 ──それは帰りにも正面ハグが待っていることを意味する── にむけて、由里子はその手を伸ばしてしまったらしい。
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