第44話 式鬼
時は少しだけ戻る。
加奈が上空で包囲されてる時に康隆と言えば……
「多分……こっちに来るだろうなぁ……」
加奈にとってはこの敗北の原因は全部康隆である。
逃げられないとわかったら、最後の一矢を誰に向けるかは明らかだ。
しかも今の康隆はズタボロなので、簡単に倒せるだろう。
だが、康隆は懐から符を取り出し、それを見た蒙波が唸る。
「それは……」
「真尼の式神。行く前に借りたんだ」
そう言って真尼の符を前にして叫んだ。
「いでよ眼照亜!」
ぼわぁぁぁぁぁん……
いつもの上半身が裸の美女の蜘蛛が現れる。
そして眼照亜はどうしたかと言うと……
ふわり……
康隆を抱きしめた。
「触った感覚が無いのが残念」
余裕でそう言い放つ康隆の身体へと入っていく……………………
それを見て蒙波は目を見開く。
「お前まさか!」
「真尼から借りた時だけ出来るんだよねぇ……………………『式鬼』が」
康隆の身体に蜘蛛の文様が浮かび上がる。
式鬼とは陰陽師の戦士の形で、式神を憑依させることで物理攻撃も出来る戦士に変わることである。
通常、陰陽師はどちらかと言えば魔法使い型で、物理攻撃は不得手だが、式神を憑依させて言うなれば魔法戦士として戦うことも出来る。
そして、康隆がやったのはまさにそれだった。
とは言え、康隆も体はふらふらだから、やることと言えば単純なことだった。
「やっぱり来たか!」
突然急降下してきた加奈に手をかざし、糸を吹き付ける!
びゅるるるるる……………………
康隆の手から大量に糸が吐き出される!
「「「「「「「「なぁっ!!」」」」」」」」
あっという間に糸に絡めとられる加奈。
その瞬間、恐ろしいほどの叫び声を上げて暴れた!
「「「「「「「「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」」」」
まるで糸が熱した鉄線のような扱いでもだえ苦しむ加奈。
ぼとりぼとりぼとり……………………
暴れる内に首が一つまた一つと落ちていく……………………
それを見て凍り付く康隆。
「えっ? 何で?」
「いやだぁぁぁあ!! 死にたくなぁぁぁぁあいいいいい!!」
全方向から締め付ける糸によって体が寸断されていく加奈と訳が分からないと言った顔で見ている康隆。
そして……………………
「うあ……………………」
最後の頭が切り落とされて、細切れになった体が落ちてくる。
「「おわわわわわ!!」」
慌てて飛びのく康隆と蒙波。
ぼととととととと……………………
細切れの身体のかけらが続々と落ちては爆ぜて肉塊へと変わっていく。
「……そうか……糸だからこんなに威力があるんだ……うっかり忘れてた……」
康隆自身は捕縛するつもりでいたのだが……糸が強力な武器に早変わりすることを失念していたのだ。
わかっていたつもりでも対処するとなると間違えることも多い。
肉塊と化してしまった加奈を見て康隆はたらりと冷や汗を垂らす。
「ようやくわかった。真尼はちょっと縛り付けただけだったんだね……………………こんなになるとは思わなかった……」
「良かったな。婚約者がむやみやたらに殺す人間じゃなくて」
真尼に対する殺人未遂の容疑が晴れて一安心した康隆だった。
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