第43話 相討ち覚悟
「「「「「「「「くそっ!!」」」」」」」」
加奈は苦悶に打ち震えながらも飛び立った!
「「「「「「「「おのれ芋侍め! 必ずこの借りは返す!」」」」」」」」
そう叫びながら天高く逃げ去ろうとする加奈だが……
ぼごぉん!
突然、頭の一つが吹き飛んだ!
「「「「「ぐぎゃぁぁぁ!!」」」」
頭が吹き飛んで苦悶の表情を浮かべる残った七つの頭。
一方で頭を吹き飛ばした鳥人の方が信じられないといった顔になっていた。
「嘘だろ……尺八で殴っただけでこうなるのかよ……」
「武器以外なら異常な威力だな……」
周りの鳥人も唖然としている。
殴られたのは尺八で当人もそこまでの威力とは思っていなかったようだ。
「おのれぇぇぇぇ!!」
加奈は殴った鳥人を睨みつけ、法術を放とうとするのだが……
ずぶっ……
「「「「ぐぎゃぁぁぁぁ!!!!!」」」」
再び苦悶の表情を浮かべた!
後ろにはべっとりと血や脳漿がこびりついた笛を持っている鳥人がいた。
「うげ……笛は止めた方が良いな……」
今度は笛で頭の一つを貫かれた!
完全に弱点がバレてしまっている。
苦し気に呻きながらも辺りを見渡すと完全に囲まれていた。
「神妙にしろ!」
「「「「「「「「くそっ!」」」」」」」」
状況の悪さに唸る加奈。
先ほどまでは攻撃が一切通用しないので手をこまねいていたが、やり方がわかれば大したことは無い。
鳥人たちは各々が楽器を手に持って待ち構えていた。
(あれを食らっただけで、体が吹き飛ぶのでまずい!)
康隆の思っていた通りで武器なら一切傷つかないのだが、それ以外だと異常なダメージを食らう。
法術攻撃も鳥人たちは聖歌で対抗できるし、彼らが持っている楽器はそもそも武器ではないので著しいダメージを食らう。
本来なら琵琶で殴っても琵琶が壊れるのに、今の加奈では腕が吹き飛ぶくらいの威力に早変わりする。
観念した加奈はにやりと笑う。
(ならば!)
急降下して一人の男に狙いを定める!
(せめてあいつだけでも倒す!)
加奈はそう考えて狙いを康隆に定めた。
ぼわぁん……
手に法術を貯めて、周りを威嚇した後……
(ここだ!)
びゅんっ!
康隆めがけて急降下する!
(あの芋侍だけは許さん!)
加奈はこれまでの自分の人生が走馬灯のように思い浮かんだ。
初めて恋人が出来たこと
だが、すぐに逃げられてしまったこと
その男の借金を丸かぶりしたこと
その後も男が出来ては借金だけ残して逃げられたこと
岡場所で働くことになったこと
そこで光延と出会ったこと
光延に運命に感じたけど、彼がお尋ね者になって匿ったときのこと
そして、光延から妖神の秘儀を教えてもらったこと
(糞みたいな男たちの中で光延様だけは私に生きるすべを教えてくれた!)
彼のお陰で海老屋を乗っ取ることが出来、妖人としてそれなりに強くなれた。
盗賊団を支配下に置き、贅沢できるようになった。
そう……康隆が正体を暴くまでは人生の絶頂を迎えていた。
(あの男だけは殺す!)
そう考えて康隆に向けて急降下する加奈だが、あることに気づいた。
(うん? あいつ入れ墨なんか入れてたか?)
顔や鎧が取れて見えている素肌に入れ墨のようなものが見えたのだ。
だが、それを考えている時間は無い。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」
加奈がそう叫びながら手にした法術を叩きつけようとするのだが、康隆はそんな加奈に片手を広げて見せた!
(吹っ飛ばしてやる!)
そう思って加奈が法術をぶつけようとした時だった。
ばっ!
康隆の手から真っ白い何か自分の視界を覆いつくす!
「何っ!」
一瞬たじろいでしまう加奈だが、すぐに正体に気づく。
蜘蛛の糸だった……
「しまっ!」
一瞬止まってしまった加奈の身体を蜘蛛の糸が覆い始めた!
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