第42話 意外な武器
数十分後……
「何故当たらない!」
「へいへいどうした? これまでか?」
悠々と元気に動き回る康隆。
これには理由があった。
(そもそも攻撃自体は単調なんだよなぁ……)
確かに法術を大量に撃ってくるのだが、まっすぐ飛んでくるだけで、特に工夫している様子はない。
他の敵と戦っている時ならともかく、集中すれば簡単に避けられるのだ。
(挑発に乗らずに他の妖怪の支援砲撃してればいいものを、簡単な挑発に乗っちゃって……)
だが、これにも理由があった。
(芋侍呼ばわりしてるってことは下に見てるってことだからね……そんな奴を倒せないなんて誇りが傷つくんだろうなぁ……都会人の誇りが)
人を下に見るとこういうことが起きるのだ。
加奈は芋侍と馬鹿にしたことで、逆に完全に足元を見られた。
いらいらした加奈はにやりと笑う。
「当たらぬのならこれで!」
ボワァン……………………
そう言って法術の光を手に貯めて急降下してくる加奈!
直接法術をぶち当てるつもりのようだ!
だが、康隆はにやりと笑った!
(この時を待っていた!)
そして急降下する加奈は康隆と衝突して……
ぼごぉぉぉん!!
二人がぶつかった場所で爆発が起きる!
「どうなった!?」
蒙波が心配そうに二人の様子を見ていると……
「「「「「「「「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁあぁああああ!!!!!」」」」」」」」
加奈が物凄い叫び声をあげて苦悶に打ち震える!
それを見て驚く鬼平。
「一体何が……」
加奈は光延同様に攻撃が一切通用しないはずだった。
だが、いまは恐ろしいほどの叫び声をあげて苦悶に震えている。
「ぐぐぅ……どうよ!」
康隆はと言うと……こちらも無事では済まなかったようで、かなりの重傷を負っている。
鎧がいくつか剝がれており、左手がぶらぶらしていたし、足もふらついてる。
ふらふらと加奈から離れるのだが、加奈も攻撃するどころではない。
「「「「「「「「あぐがぁぁぁ!!!!」」」」」」」」
何かが腕に刺さっているのだが、それを抜けずに苦しんでいた。
その正体を知って、全員があっけにとられる。
「「「「「えっ?」」」」」
刺さっていたのは
こんなものが腕に刺さったところで大した怪我にはならない。
だが、刺さっている簪に恐ろしいほどの苦しみを感じるようで、加奈は苦しそうに呻いている。
ばたりと座り込んだ康隆はにやりとわらう。
「やっぱり効いてるな……」
「タカ! どういうことだこれは!」
「あいつが言ってただろ? 『あらゆる武器が効かない』って。じゃあ、武器以外ならどうなんだろって思っててな……」
そう言って蒙波の持っているクナイを指さす。
「光延はクナイだけが効いたのがおかしいと思っててさ、ひょっとしたら、そういう妖術なんじゃないかなって思ってたのよ。そういう無敵の能力って絶対に反動が大きいと思ってさ」
「まあ、そうかもしれんが……よくもそこにあそこまで賭けること出来たな……」
相討ち覚悟の攻撃をしたようなものなのだが、康隆は平然と言った。
「それだけなら賭けないよ。確信を持ったのはあそこまで強いのに真尼とほぼ互角だったことだよ」
「あっ!」
確かにここまでのことが出来るのに凄腕の巫女にして陰陽師とは言え、真尼と互角だったのはおかしい。
月婆は重傷を負っていたので、真尼が戦って追い払ったのは間違いない。
「あんな戦いされたら絶対勝てないのに、何で互角だったのかなって考えたら、真尼なら最初に糸で絡めとると思ってさ」
「なるほど!」
真尼の連れている式神は蜘蛛の式神だ。
糸を使った攻撃を得意としているので、糸は武器には入らないが、十分戦闘の役に立つ。
「実際、さっきあの人が撃った糸だけは燃やしてたからピンと来たんだよ」
そう言って先ほど加奈に糸を吹きかけた陰陽師を指さす康隆。
その陰陽師は砂糖男と戦っているので話すどころではないが、彼のお陰で弱点がわかったのだ。
「あのお姫さんが天敵ぐらいに相性が悪かったってことか……」
「しかも不意打ち食らってるらしいからね……」
「そこは笑えんぞ! 一般人だったら殺人事件だからな!」
たまたま相手が殺されても文句言えない立場だから問題なかっただけである。
とは言え、ここまでわかれば他の者でもやりようがある。
「武器以外で攻撃せよ! それなら有効だそうだ!」
「「「「「おおおーー!!」」」」」
雄たけびを上げて加奈に殺到する火盗たち。
「妖怪どもは片付いたぞ!」
「こっちもだ!」
北町、南町奉行所が妖怪たちを倒せたようだ!
残るは加奈のみ!
「「「「「「「「くそっ!!」」」」」」」」
加奈は苦悶に打ち震えながらも飛び立った!
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