第31話 獺の篤蔵
「獺の篤蔵。押してまいる!」
じゃららん♪
獺の篤蔵が琵琶をかき鳴らすと、獺の人形の手から爪が出て康隆を切り裂かんと襲い掛かってくる!
ガギィン!
「くっ!」
獺の攻撃は思っていたよりも重い。
見た目こそもふもふだが、どうやら内側は鎧で出来ており、それなりに固い。
「どっせい!」
げしっ!
蹴りを入れて獺のぬいぐるみを押し返す康隆。
だが、既に琵琶士の男は歌っていた。
「燃える炎よ~♪ 焼き尽くせ~♪」
ぼわぁん!
目の前に火球が現れて康隆へと襲い掛かる!
「ちぃ!」
ガシュン!
火球を肩甲で受けて消すが、その頃には獺は態勢を整えていた!
じゃぎぎぃん!
再び獺の攻撃を両刀で受けきる康隆!
「法術使う連中はやりにくい!」
戦いながらも愚痴る康隆。
一方、蒙波と言えば……
「あんたの指……綺麗だねぇ……………………」
そう言って首に下げた人間の指で出来たネックレスを舐める女山伏が居た。
濃い赤紫の髪を大きなドリルのツインテールにしている女山伏で、メリハリの効いた体つきをしているのだが、胸と尻が小さいので腰が細いのが活かせない女山伏だ。
ほら貝と錫杖を持っており、それなりに強そうだ。
(山伏か…大空神『青雲』の神官……)
頭の中で山伏についておさらいする蒙波。
(天空を司るだけに風を操り、星法術を使う……)
星座を使った法術が得意な法術士になるので、これはこれで厄介である。
また、神官は基本的にそれなりの武術を持っており、近接攻撃も可能な魔法戦士のような職業でもあるので、万能型で特徴が無い。
(先手必勝!)
即座に癇癪玉を取り出して女山伏に投げつける蒙波!
「火焔の術!」
ぼわぁん!
大きな炎が女山伏の前で弾ける!
だが、女山伏は静かに唱えた。
「
ぼわぁん!
女山伏の前に大きな肩甲が現れて炎を防ぐ!
「星召喚か……」
星法術は星座や星を司る星霊と契約しなければならない。
大きな星座になるとより強い星霊となるので、中々契約出来ないことも多い。
また、詠唱時間も長くなるので、使いどころが難しくなるし、気難しい星霊が多いので何かと難しいのだ。
ちなみにこの世界ではオリジナルの星座がちょいちょい出てくるけど、そこはご容赦して欲しい。
女山伏はもう一度ぺろりと指ネックレスを舐める。
「虚栄の美香……行くわ……」
そう言って再び星霊の召喚を始める。
「一つ目小僧座よ!」
「なに!」
美香の前に寺小僧の服を着た一つ目小僧が現れる!
そして、有無を言わさず一つしかない目からビームが出る!
バジュン!
「あぶねぇ!」
間一髪よけきる蒙波。
単純なだけに割と危険な星座召喚なのだ。
勿論これだけではない。
ガギィン!
「あたしも戦えるんだからね!」
錫杖を手に攻撃してくる美香!
(強い!)
蒙波は苦戦を覚悟した!
十分後……
戦いは終わりを告げようとしていた。
「神妙にしろ!」
「ちくしょう……」
悔し涙を流しながら捕縛される盗賊たち。
小路に残っていた盗賊たちも少なくなり、順番に盗賊が捕まっていく。
康隆の戦いもそろそろ決着が着きそうだった。
がぎぉいん!
「くっ……」
何度も獺のぬいぐるみの攻撃を受け止めているので疲労が蓄積したのか、中々押し返すことが出来ない康隆。
そこを好機と見た獺の篤蔵は高らかに歌う!
「本当の恋が出来そうかい!♪♪♬♬」
篤蔵が叫んだ瞬間! 急激に風が集まり、康隆へと注がれる!
それを感じた康隆はにやりと笑う。
「これを待っていた!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます