アルファ―ル城

驚いた。

この村に心優しい人がいるだなんて。


コギル・レウダーゼン。性別は男。


「君が、噂の隠しスキルを持っている人か」


『無職』とは言わなかった。


「ええ、そうですけど…」


「君、たぶん、大魔王チチチーチ・チーチチをたおそうとしているんでしょ」


「…それが?」


「それなら、先にアルファ―ル城に行くといいよ。たくさんの武器や防具が売っている」


「どうしてそんなことを?僕は無職ですよ?」


「別にいいじゃないか?無職だからって、差別なんてしないよ。だって無職っていうのは、何にも悪いことじゃないし」


なんていいやつなんだ!俺はこいつとめちゃくちゃ仲良くなれそうだ!あのリア充どもと違って!


「ありがとうございます!行ってみます!」


「うん。気を付けて」


そして俺はコギルさんから道を教えてもらい、アルファ―ル城へ行くことにした。お金は、道中でモンスターを倒して、結構手に入れることができた。


…アルファ―ル城についた。すごい。あの村よりもずっと豊かだ。


脳内でドラクエの音楽が再生される。そして俺が武器屋に行くと…


――リア充がいた。


「あれ?おっさんじゃん」


「(・д・)チッ。何でここまで来るんだよじじいが」


「こっちのセリフだ」


俺らは険悪ムードになった。

そしてリア充の男の方は武器屋の男に話しかけた。


「いやぁ!このおっさん無職なんですよ!む・しょ・く。分かりますかねぇ!いやぁ、こんな無職に武器を売ったって、何にも使えないですよ!無駄になるだけですよ!」


チッ!余計なことを!


ざわざわ…ざわざわ…


厄介なことになったぞ。これは。


俺は何となくごまかすが、何やら兵がこっちに寄ってきた。


そして、兵が殴った…のは、リア充の方だった。


「てめぇ!何しやがる!」


「こっちのセリフだ!無職を差別するなんて、お前(自主規制)か?(自主規制)なのか!?」


――どうやらこの国では、無職を差別するのは、重罪のようだ。やった。あたりの国だった。


そして、リア充は牢獄に入れられた。ふぅ。これで一安心だぜ。


その後、俺は武器を手に入れて、アルファール城を出ようとした…その時だった。


「敵襲!敵襲~~!!!!」


人は混乱しながら、兵へついていった。


「ほら!旅人さんも逃げてください!」


「何があったんですか?」


「いいから早く!」


俺はしぶしぶそれを受け入れ、兵へついていった。


連れてこられたのは、地下の暗い部屋だった。

俺は兵に話しかけた。


「何があったんですか?」


「巨大ゾンビが現れました」


「巨大ゾンビぃ?」


「そうです」


兵は落ち着いて説明を始めた。


「ここにはたくさんの食糧があります。巨大ゾンビは冬眠のための食糧をここに取りに来るのです。抵抗はしません。今ゾンビに立ち向かったら確実に死にます。悔しいですが…そうするしかないのです」


兵はとても悲しそうで、今にも泣きだしそうだったが、目の前に俺のような旅人がいるからだろうか…涙をこらえていた。


――そして俺は立ち上がった。


「そのゾンビ、俺がぶっ殺してやりますよ」


兵はとても驚いていた。大声で言ったため、他の人も視線をこちらに向けた。

兵は正気を戻し、少し怒ったようにいった。


「む、無理ですよ!あいつの凶暴さはあなたは分からないかもしれませんが、とてつもなく強いのです!剣はもちろん、魔法でさえも通らないのですよ!」


「だから何ですか!」


「!」


兵はまだ少し怒っていた、が、俺はまだ続けた。


「食料、取られちゃ困るんでしょ」


「ッッ!でも…」


「俺には隠しスキルがあるんです!」


「!?」


みんな驚いていた。


「俺の隠しスキルなら…そのゾンビ、倒せるかもしれない!」


兵は迷っていた―が、


「わかりました…ですが…」


「ですが?」


「死なないでくださいね」


「ふっ!なんだそれ!死ぬわけないじゃないですか!」


…誰かがゆっくりと拍手をした。その拍手は瞬く間に広がり、こんな俺を送り出してくれた。


――たががゾンビ。ぜってぇ倒す!

そう決めた。



…拍手は、まだ鳴り響いていた。

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