6️⃣
「——今、忙しいから少し待って」
横からあの女がひらりとナイフを向けて俺の動きを止める。マリアだった。必死になるあまり気付いていなかったが、どうやらこのガゼボまで一本道が作られていたのか、アーチ状の出口の横にマリアは立ち、庭からの来訪者を待っていた様子である。
ツインは俺の横を通り抜けてマリアの所まで歩いて行くと、甘える子供のようにマリアにすり寄った。同じ顔の人間がじゃれあっている光景は、はっきり言って異常だ。
「{
「楽しかった〜! でも{
ツインはそう答え、一度森の方を振り返るとべぇーっと舌を出して誰かを挑発した。そしてくるりとマリアに振り返りその唇にキスをして、そしてパッと姿を消した。残ったのは中に浮かぶ一枚のカードで、そのカードを射抜くように矢が一本飛んでくる。
「もう、喧嘩しないの……{
マリアが言ってすぐ、頭上で羽撃く音がする。見れば“鳥人間”と形容するに相応しい、人型の鳥がマリアの隣に降りてくる。
「素晴らしい精密な狩りだった。やっぱりアナタ以上の狩人は居ないわね。アナタの主であることを誇りに思うわ」
マリアはそう言って、鳥人間の嘴にキスをした。鳥人間はポッとそっぽを向き、また彼も一瞬で姿が消えてカードになる。宙に浮かぶ二枚のカードを一つずつ腰に提げたカードケースにしまいながら、マリアは「{
「ずっと
労りの言葉を掛けるマリアに、牛男はずいと頭部を差し出す。マリアはパァっと顔を明るくして、「アナタが狩ってくれたの?」と問う。牛男が頷けばマリアは「なんて良い子なのかしら!!」と大袈裟なまでに喜んで、自分の二倍ほどある背丈の牛男に抱き着く。牛男がしゃがめばその頭を抱き寄せ撫でて額にキスをした。まるで子供が挑戦に成功した時に褒める母親のような姿だった。
「可愛いアタシの仔、迷宮を作り出した上にこんなに上手く狩りが出来るようになってママ嬉しいわ! 大好きよ、本当にありがとう」
一頻り褒められて満足したのだろう、大男は首をマリアに渡し、カードとなって消えた。そのカードもカードケースにしまって、マリアは首を持ちどこかへと歩いて行く。
「はい俺上がり〜」
その時、ガゼボから呑気な声がした。アインだった。トランプゲームで、一番最初に上がったらしい。どこか誇らしげで己の強運を鼻にかけるような気取ったニヤケ笑いをしている。
「また兄ちゃんの勝ち!?」
「テメェやっぱイカサマしてんだろ」
「『騙される方が悪い』、世の中そう出来てんだわ〜」
「、おい、てめぇ!!」
まるで何事も無かったかのように、庭での惨状を知らないかのように、今目の前で生首を持った女が後ろを通ったのにも気付かないかのように、のんびり卓上のトランプをシャッフルして次のゲームを始めようとしているアインに、俺は叫ぶ。
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