第4話

翌日は妹を置いて私は震えながらも軍の人に手を引かれて遺体が誰なのかを確認していく。


「この、男の人は、ジーロさん。家族はエルさんとチャダちゃん。ファロ村に兄弟が住んでいたはず。この人はカズンさん……」


覚えている事をなるべく詳しく話をしていった。


他の村に親戚がいる場合はその人達に連絡が行くようだ。自分の両親は配慮されて聞かれなかった。そうして私達は軍のテントでお世話になって数日を過ごした。妹は家や道についた血だまりをみてショックで軍のテントから出られない状態になっていた。私は壊れた家に最低限の荷物を取りに行ったり、軍の人達にヒエロスを掛けて回った。今、私が出来ることはそれくらいだもの。それに何か動いていなければ心が壊れてしまう気がした。


私の親族は遠い街に祖父母と伯父さんが暮らしているけれど、伯父さんと母は仲が悪かったと思う。手紙のやり取りをしていた記憶がない。


「ナーニョ、ローニャちゃんにとって厳しい話をするがいいかい?」

「はい」


軍のリーダーである豹の獣人さんはテントの中で私達に話をする。


「君の親戚に連絡を取ったのだが、ナーニョの言っていた通り君たちを家に迎えるのは難しい、と連絡があった。私達国王軍も村の人達を埋葬した後、ここを去る。君達二人は隣村の教会に引き取られる事になった。これからその村に向かう」

「……リーダーさん、何から何まで有難うございます。私はローニャと教会に行きます」

「すまない」


こうして私とローニャは隣村の教会に引き取られていった。



豹の獣人は神父様に隣村が私達以外全滅した話をしていて、壊滅した村のお金を集めて全て教会に寄付してくれていたようだ。何故村のお金を集める事が出来たのかと言えば、魔物が付けた血を目印に別の魔物が襲ってくるという迷信があるためだ。

魔物に襲われた村の物は不浄なものと考え、最低限の物しか持ち出しをしないのだとか。どうしても必要な物がある時は教会で浄化をお願いするのだ。


当時の私達はまだ子供だったため、大きくなるまで聞かされていなかったが、独り立ちする年齢になったら二人にお金を持たせてくれるようにリーダーさんが神父様に掛け合ってくれていた。


引き取られた教会は子供がいない。つまり、私とローニャのみ。教会は歳のいった神父様とシスターが暮らしている。昔は孤児院をしていたようだが、皆独り立ちしていき今は子供がいないのだとか。私とローニャは教会での生活が始まった。

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