第24話まるちゃん

 この夏休みは再び新幹線での帰省となった。私たちが帰省している間、ゴンは生まれたところへしばらくの間里帰り。ゴンの世話を頼むと、その家の人も快諾してくれて、ゴンを連れていくと、すきを見てダーッと走り出した。慌ててどこに行ったのか探してみると、なんと家の前にいた。そう、ゴンにとってはわが家がもう住み慣れたところになったのである。でも、私たちは翌日からいないので、ゴンに

「しばらくの間ここにおってな。また帰ってきたら迎えに来るからな」

そう言ってゴンのリードを家に人に渡して、家に帰った。そして新幹線で山口に帰省し、熊本に長期出張している父とは駅で合流して母の実家に向かった。久しぶりに家族5人がそろった。実家には計9人もの人間が集まり、それは賑やかであった。

 私たちが母の実家に着くと、目いっぱい喜びを表すまるちゃん。家について車を降りるといつも盛大に私たちの顔をなめたり、しっぽを振って歓迎してくれた。私たちは家に着くなり、すぐに荷物を置いて、姉と妹と私で散歩へ。1年前はよちよち歩きだったが、さすがに1年たつと猟犬ということもあり、力が物凄くて、私と姉の二人でリードを持っていないと引き倒されそうであった。

 私たちが帰省してしばらくたったある日、突然激しい雷雨に見舞われた。まるちゃんが悲鳴にも似た鳴き声を上げて恐がるので、小屋から出して家の中に入れると、明かに恐怖を感じて体を震わせながら私たちのそばに寄り添ってきた。そして恐がるまるちゃんを抱きしめながらしばらくすると、物凄い爆発音が響いた。私たちのいるところから数百メートル離れたところに雷が落ちたのである。さすがにこの時は私たちも恐怖を感じて、まるちゃんに続いて妹も怖さのあまり鳴きだした。私と姉は

「めっちゃビビった~」

「今の音凄かったなぁ」

などと話していた。

 その激しい雷雨が去った後もまるちゃんはおびえていたので、その夜は小屋ではなく、家の中で一緒に寝ることになった。

 翌日になるとまるちゃんも落ち着きを取り戻し、元気になっていた。やはり雷は犬も人間も怖いのである。

 この雷の後は何事もなく無事に過ぎていって、母と私たちは大阪へ。父は熊本へ向かって改札口で別れて、それぞれのホームへ。父は私たちに

「気を付けて帰れよ~」

と言っていた。そしてそれぞれの新幹線に乗り込んで新大阪駅で下車。そこから地下鉄と私鉄を乗り継いで大阪の家に帰宅。やはり父のいない家はやけに広く感じられた。9月末までの父の出張が終わるまで、またしばらくの間は、母が一人で家の中を切り盛りする日が続くことになる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る