第25話進級テスト

 家に帰って、真っ先にゴンを迎えに行くと、ゴンは

「会いたかったよ~」

とでも言いたそうにして、しっぽを振って姉と私を迎えてくれた。そしてゴンと一緒に帰ってそのまま夕食。ただ、この時は山口から帰ってきて疲れていたというのと、片付けなどでバタバタしていて、なぜかゴンのエサを用意するのを忘れていたようで、次の日の夜

「なんか、今日はえらいようけ食べるなぁ」

と思っていて、はたと昨日のエサをやるのを忘れていたことを思い出した私である。そのとこはゴンに

「マジでごめん」

と謝った。

 夏休みが終わり、2学期が始まってすぐのころ、私はそろばん塾の進級テストがあり、模擬試験が始まった。計算式が10問出されて、制限時間10分の間に6問以上の正解で次の級に進級できるというものであった。制限時間の設定は先生が手動式のタイマーを使っていたので、9分でアラームが鳴ったり、11分で鳴ったりとかなりまちまちであった。9分で模擬試験が終わったときは、全部計算できていればいいが、途中で間違ってしまったときは、計算式の最初からやり直さなければならないので、解けないときもあった。たまに10分過ぎてアラームが鳴らないときは

「ラッキー」

と思いながら計算式を解いていた。

 そして迎えた進級テスト本番。私は落ち着こうと、ふーっと一つ大きな息をついて試験開始の合図を待った。シーンと静まり返る教室。緊張感であふれていた。そして先生の

「計算始め」

の合図とともに教室に響き渡るそろばんをはじく音。この時は途中で間違えてしまい「やばい。間に合わへん」

と思っていたが、ラッキーなことに先生のタイマーが設定を10分より少し長くしていたようで、ぎりぎりアラームが鳴る前に計算が終わって、無事に8級から7級へと進級できた。

 進級テストが終わって、結果を両親に伝えたその週末。私の進級祝いということで、いつもなら父の給料日に行く喫茶店に母が連れて行ってくれた。父はまだ出張でいなかったが、家族皆から祝ってもらえるというのはうれしいものである。私はいつものようにパフェを注文して、美味しく食べた。家に帰ってから7級の計算問題を見てみると、やはりレベルが上がって、難しくなっているのを実感した私である。

 そして父が出張を終えて大阪に帰ってきた。新幹線で帰ってくるので、家族みんなで新大阪駅まで迎えに行った。父は熊本のお土産をたくさん持って帰ってきてくれた。父は、私たちが夏休みに入る前に大阪の家から熊本に行ったので、大阪の家に帰ると

「やっぱり家が一番ええなぁ」

と話していた。熊本では会社の寮で過ごしていたそうであるが、やはり家の方が落ち着くといっていた。こうして再び、家族5人でぞ生活が始まった。ゴンも父が帰ってきて嬉しそうであった。

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