第2話 首都ホワイトディーと巫女サウラ
ぽつりぽつりとレンガ造りの小さな家が立ち並ぶ向こうに、大きな建築物が見えてきた。高台には王宮らしい白い建物が見える。
「ドラゴナイトの首都ホワイトディーだよ。龍神が来た時代に高名な建築家が整備した街だって言い伝えがある。山の泉から水道橋を作って各家庭にジョウスイドウをつけたのもその人なんだって。ジョウスイドウってボクには何のことかわかんないけど。」
「上水道か。すごいな。」
遠くからビル群のように見えた建築物は各ビルの1階が商店になっており、その上に集合住宅や事務所が入っているようだった。まさしく中世の商業ビルである。
「こっちだよ。」
ミーアがビルの一つに促す。酒樽やおしゃれな空き瓶で店舗の外が飾られ、繁盛している酒場であることがわかる。店はまだ営業時間ではなかったが、ミーアはどんどん中に入って行って店主をつかまえた。
「歌のお兄さんが酒場で歌っていいかって言ってるよ。」
店主はびっくりしたようだったが、続いて入ってきた様子のいいイノスを見て、
「旅の方か。もちろんいいとも。あんたのルックスなら女性客が口コミで他の客を集めてくれそうだ。」
そう言ってイノスと握手をし、言葉を継いだ。
「営業時間は午後5時からだ。その時間になったら来てくれ。」
「わかりました。」
ミーアは嬉しそうにぴょんぴょん跳ねながら言った。
「決まりだね!時間まで街を案内するよ。」
さて、こちらは王宮の小神殿である。
龍神の神殿は、ここから少し離れた場所にある山の神殿の本殿、
そしてここ王宮の小神殿から成っている。
山の本殿には国家レベルの神託が必要な時や、新年や国王の生誕祭など、年中行事の時に輿で参拝に行く。国王の娘であり、龍神の巫女であるサウラはまだ17歳であったが、巫女頭としてそういう参拝の責任者であった。
小神殿は噴水と美しい白いレンガの建築で、今日サウラは龍神にここに呼ばれ、神託を受け取っていた。小神殿で神託を受け取ることは珍しい。だからサウラはこの神託が間違いであってほしいと願った。しかし国王がしきたり通り中に入り、サウラに神託の内容を尋ねると、サウラは戸惑いながらも伝えるしかなかった。
「龍神は望む人物が都に入ってきたと言っています。その人物が龍神を解放するキーマンであると。龍神は神殿から解放されたがっています。儀式には生贄を供するようにと要求しています。」
国王は心底驚き、サウラに尋ねた。
「こんなに信仰の厚い国民を見捨てるというのか?サウラ、その神託は間違いではないか?このご時世に生贄など…、供することができるはずがない!」
「わたくしは、龍神のお言葉を伝えることしかできません…。」
サウラは無力感に苛まれながら言った。父王の言葉はそのまま彼女の心情であった。国王はサウラを責めるのは筋違いであると気づき、会議を招集するために王宮の広間に向かった。
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