第45話 問答無用!

彼は、かつての関係者を総括し続けている。

そこには、話せばわかる余地など、ない。


問答無用!


彼は今日も、当時身の回りで起こっていたことを総括している。

そんな彼だが、ある人物のことが時々、嫌でも気になるという。


あの人は、私の書いた本の存在に気付いているだろうか?

気付いたとして、読んだことがおありだろうか?

もし読んでいたとして、どんな感想を抱いただろうか?


その人物と連絡を取る機会は、何度かはあった。

だが、その人物に対してだけは、本のことを話していない。

他の元関係者には、その本の存在をむしろ知らせている。

それでも、その人物にだけは、その話を持ち出していない。

否、正確には、とても持ち出せないのが、実情。


あの人は、私の「総括」に、どんな思いを抱くであろうか。

ふと、そう思う時が彼にはあるという。

だが、そこで彼は必ず、自分に言い聞かせるのだ。


彼がどう思おうが、何を述べてこようが、書くべきことを書くしかない!

クソ文句あるなら、言論の場で受けて立てばいいだけのことだからな。


そう言い聞かせた後、彼は黙って、

目の前のパソコンに向かって、外付けのキーボードを打ちまくるのである。


あの人物を殺すに刃物はいらぬ。飛び道具もいらぬ。

このパソコン一式あればいい。

って、ね。

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