第42話 オーガ討伐作戦
討伐に向かう馬車の中には、オレ達の他に2パーティーか、物資用のを除いて馬車の台数が10台ちょいくらいだったし、どれも同じ数だけ乗ってるとすれば約30パーティー、1パーティーが4~5人と考えて約120~150人。
但しこの中で1パーティーでオーガとまともに戦えるのは、Bランクパーティーだけだ、それがどれだけの数居るのか。
「提案があるんだが聞いてくれ」
馬車内に居る全員がその冒険者を見る。
「もしあんた等もCランクパーティーだったら共同戦線を張らないか? 本音を言うと、俺達だけじゃオーガ1匹倒せるかどうかだ、だが3パーティーでオーガ1匹を相手にすれば幾らか余裕が出来る、悪くない話だろ?」
自分達だけで倒すには労力がかかり過ぎる魔物を、別パーティーの助力を得る事が出来れば勝率は上がるし、危険度も下げられるだろうけど。
問題はオレ達だな、あの人はオレ達をCランクと思ってる見たいだけど、ギルド上ではEランクだからなぁ、素直に言うとどうなるか……。
「こっちは構わんぜ、自分よりも上のランクの魔物を相手するのに、体裁なんぞ構ってられん、死にたくもねえしな」
「あんた等はどうする?」
騙した時点で相手の迷惑になるし、仮に組んだ所で何かの拍子にバレでもしたら、絶対に揉め事になる。
そうなるくらいなら最初から話した方が楽か。
「申し訳ない、オレ達はCランクじゃなくて、バーナードさんに呼ばれたEランクパーティーなんだ」
「ちょっとまて、Eランク!?」
「お前達、相手がBランクのオーガだって知ってんだよな!?」
「ええ、知ってます。さっきも言った様にそれを含めてバーナードさんに呼ばれたので」
2組の冒険者パーティーは、Eランクパーティーが混ざっている事に困惑する。
だがその本人達はギルドの主任の一人、バーナードに呼ばれたと言っている。
その事が2パーティーを更に混乱させていた。
「多分ギルドから討伐の指揮を執る人間が来てるはずだから、とりあえず到着したら指示を仰ぐ、俺らじゃそれが事実かどうか判断付かないんでな」
「それで納得してもらえるなら構いません」
(お兄、正直に言っちゃってよかったの?)
(あの場合言う以外にないさ、ギルドカードを見れば一発で分かることだし)
(それよりも、久々の高ランクの魔物と戦闘ですから、気を引き締めないとですね)
(ああ、しかも森に囲まれた山って事だから武器の取り扱いに注意するのと、流石にまだティナをBランクと戦わせる事は出来ない、オレ達が全力でカバーするから、索敵に集中してくれ)
(了解です)
(あと冒険者ギルドで上位種が居るかもって話が出てたし、ユウカは必ず敵を
(おっけー)
目的地に到着したオレ達は直ぐに事実確認のために、討伐の指揮を執る職員の下に連れて行かれた。
「フィリップさん、忙しいとこすまねえ、あんたは彼等がEランクパーティーなのにここに来てる事について、説明出来ますかい?」
周りが騒然となる中、名前を呼ばれた男性は目を見開く。
何せ数時間前にギルド側の不手際とはいえ、冒険者ギルド内でとてもEランクとは思えない、明確な怒りを放って行った本人がいるのだから。
この人が現場指揮の為にギルドから来てる人か、顔に魔物からの攻撃で付いたのか、眉間から斜めにキズのある40半ばくらいの男性、腕や脚の筋肉ががっしりとしている事から、胴自体も筋肉で引き締まった体型だろうな。
「一応バーナードさんに呼ばれて来たと説明はしましたけど、オレの説明じゃ判断がつかないって事で、事実確認をしてもらいに来ました」
(さっき見た時とは変わって穏やかな雰囲気だが、何時、何が逆鱗に触れるか分からん相手だ、あくまでバーナードに呼ばれた事実は間違いないと伝えた方が得策だな)
「間違いなく彼等はバーナードに呼ばれて集められた者だ、俺も何故呼ばれたかまでは聞いてない、ただ、上が戦力になると判断して集めたのであれば戦ってもらうだけだ」
「ギルドを疑う訳じゃないが、オーガと比べて3ランクも違って戦えんのか!?」
「お守しながら戦えるような相手じゃねぇよ!」
(あ~やっぱりこうなっちゃいますよね……)
(仕方ないさ、ランクだけ見ればオレ達は格下も格下なんだから)
(だからといってこの雰囲気はイラッと来るけどね)
(抑えなさい、今の私達じゃ何を言っても信じてもらえないわ)
やっぱりもう少し上のランクに上がった方が、こう言う時にはならないかもしれない、Bランクもあればある程度社会的な信用と信頼も得られるか。
ギルドランク=社会的信用と考えれば、オレの考えがどれだけ彼女達に迷惑を掛けた事になるか、戻った時にきちんと話し合おう。
「これはギルド上層部の決定だ! そして今回の討伐は1日で終わるとは思っておらん! 各自野営の準備をして、終わったらこっちに集まってくれ!」
聞いていた冒険者達は渋々フィリップの指示に従い、各々の野営の準備に取り掛かる為に離れていく。
オレ達は野営と言ってもテントじゃなく、普通に野宿だからなぁ、こっちで現代日本にある様なテントがあれば楽だけど、確実にそんな便利アイテムは無いだろうし、1からオレが作れる知識も技術も流石に無い。
まぁ丈夫な布を使ってテントモドキを作るくらいは出来るかも知れないが、その場合は設計図が必要になるな。
「野宿主体の私達は準備も何も無いですね、私はナナセさんが言ってた通り索敵に力を注ぎますけど、オーガが2体以上居る場合はどうしますか?」
「2体までなら倒すから教えてくれ、倒す時はオレが1匹、アヤカとユウカで1匹で分ける、ティナはオーガの攻撃の余波に気を付けて索敵を続けてくれ」
「オーガが3体以上居る場合はどうしますか?」
3~4体は同時に相手をして倒せるとは思うけど、ティナが居る事と、アヤカとユウカの防御力を考えると危険だよな。
それに時間を掛ければ近くに居るオーガが来る可能性もある、そう考えると2体までが安全か。
「パーティーの安全面を考えて戦わない、放って置いて数が少なくなるのを待つ」
「それだと他のパーティーが危険に晒されるんじゃない?」
「悪いけど高ランクの魔物相手にしながら、他のパーティーの事までは面倒は見切れない、自分達でなんとかするか、上手く逃げ切ってもらうしかない。あと難しいかもしれないが、ティナにはオーガに囲まれない様に索敵を頼むよ、もし戦闘中に近付いてくるヤツが居れば直ぐに教えてくれ」
「了解です」
さて、初めて他の冒険者パーティーと組んでの討伐だけど、どうなるか……。
多分だけど冒険者に死人が出るだろうし、オレの場合、
問題はアヤカ・ユウカ・ティナの3人だ、人の死体、それも場合によっては凄惨な現場を見る可能性もある。
そんな死体を見た時にパニックになって取り乱すのか、それとも、歯を食いしばって耐えられるのかで、この討伐の難易度は変わるし、今後の成長にも関わってくるだろうな
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