第22話 人攫いを襲撃

走っては休憩挟んで走ってを繰り返し隣国へ移動している道中とある光景を目撃した。


「ねぇこの先。」


「分かってる。敵の数は数人だけどどれも僕らが匙を投げたくなるぐらい強い。」


「人質も多そうだよ?無視した方が…。」


「血は遠くなってるみたいだけど同族だし無視は出来ないよ。罠作って誘い出して時間稼いでる間に救出が現実的。復讐は当人達に預けるとして、救出したら即離脱で逃げるのが理想。罠の設置とか誘い込みとかは僕がやるから救出と離脱はお願い。」


「シル君が言うなら仕方ない…。無理そうだったらシル君回収して逃げるからね?」


「それで良いよ。ディーネの足力に勝てるのなんてそんなに居ないしね。数秒で音速超えるのに生身で耐えられる存在自体あんまり居ないしね。」


「じゃあ今日は罠設置で明日行動って感じ?」


「まぁ、あの感じならもう少し留まってくれそうだしそうする。僕らの同族に手を出した事を後悔させてやろう。丁度森の中だし道中毒草とかちゃんと回収してるし、当たれば即死のクソトラップ大量に作れるよ。」


僕は道中で採取し続けた毒草を惜しみなく使い罠や毒矢の作成に勤しんだ。罠の材料である木々や石の採取はディーネに任せ、連中が逃げれぬように逃げ道にだけ罠を設置する。どんな動きが出来でも人質の救出は確実に出来る程度に準備を終えると僕らは作戦通りに同胞の救出を開始した。

僕は手始めに弓を構え速射し致命傷を狙いながらも罠へと誘導する。矢を口で引いてる都合上秒間3本撃つのが限界だがグロスボーなんかよりは全然速いし使いやすい。やはり、使い慣れている武器だと狙うのも楽。


「敵襲!!」


周りを警戒していた男の怒号が森をに轟、耳を劈く。だが、その程度の索敵では行動が遅い。遅過ぎる。既にその男含め5人中3人に猛毒の矢が突き刺さってる。ある程度装備を固めて安心していたみたいだけど鎧みたいな隙間だらけの防具で僕の矢が防げる訳がない。四方と上を物理的な障壁で覆わない限り防ぐ術はない。


「即死しないのはある程度毒耐性があるのか致死量を見誤ったか?」


想定外な事に奴らは全員即死しなかった。普通に矢を引き抜き臨戦耐性に移っている。だが、確実に動きは鈍っているしいつも通り動ける奴は比較的機動力が低そうな奴だけ。矢の方向から撃ってきた方向を推測しようとしている時点でド三流。そんな隙だらけだとディーネの存在にも気づけず人質を奪われる。…こんなド三流以下の奴らに同胞の血を引く者達が捕えられるとかどんだけ鈍ってたんだよ。


「復讐は当人達がするものだから死ななかったらそれでも良いけど殺す気で後処理。逃す気はないよ?」


僕は再び矢を放つ。


「っ!!気づいたな。あの司令塔らしき女。でももう遅い。毒が効きにくいだけで効いている。解毒の方法は僕知らないし助かる道はない。毒で死なずとも囚われていた彼らの復讐で潰されるだろうしね。」


僕は攻撃をやめ逃げ回る事に専念する。初動で全員鈍らせれた事は大きい。動きが鈍れば罠に掛かりやすくなるし罠に掛かれば自ずと隙が生まれる。隙が生まれればまた毒矢を打ち込める。ゆっくり確実に蓄積させてって、人質全員を安全な位置に移動させる時間を作る。あとは狩れそうなら狩って無理そうなら撤退。こちらの姿は見られていない以上逃げれば捕らえることは難しい。


「こっちに気付いても何も出来なきゃ意味が無い。多勢に無勢なのに僕がお前らの目の前に現れる訳がない。僕が撃っては逃げ回るを繰り返すだけの簡単なお仕事で今回は終わるな♪」


鼻歌混じりに嫌がらせを続け、相手を罠に嵌め続ける。僅か十数分で相手全員を瀕死にさせ同胞の解放に成功した。毒の蓄積量からして致死量の数百倍はくだらないダメージを受けているだろう。


「目的は済んだし嬲る趣味はないからとっとと終わらせる。」


狩れそうなので僕は構えて眉間を撃ち抜いた。

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