第21話 再出発

どれぐらいの時間寝ていたのか分からないが目覚めたら知らない天井だった。本当、何回目だろ。


「石って事は洞窟か洞穴かな。意識飛んでたからどうしてこうなったのか分からない。」


「シル君があまりにも眠そうだったから雨風防げる場所で寝させてたんだよ。」


「そっか。ごめんなさい迷惑掛けた…。」


「困った時は助け合いでしょ?別に気にしなくて良いんだよ。休憩は十分出来ただろうし少しペース上げて進むよ。」


ペース上げなきゃ不味いってどのぐらい寝てたんだろ。滅茶苦茶頭スッキリしてるし相当な期間寝てたかも…。


「ありがと。」


ディーネの手を取り起き上がると準備を終え移動を再開した。当然あの洞穴だかに居た痕跡は消してあり野生動物があそこで待ち伏せして何も獲れずに飢えるという事故が起きない様にはしてある。そこに住まないのなら来た時の状態に戻すのが自然への礼儀だしね。


「はあー。ディーネ、僕ってどのぐらいの期間寝てたの?」


小走りしながらディーネに問いかける。


「うーん、太陽の観測はして無いから正確な時間は分からないけど大体4、5ヶ月ぐらいだと思う。少し寒くなってるし多分そのぐらいで合ってると思う。」


「へ?もうそんなに経ってるの?…六十が寿命であの若さを見るに二十後半から三十前半、最低でも既に半年以上は経過している。寿命が直ぐじゃん。急がないといけないけど、ミスって目立って行動しにくくなるのも不味い。となると短縮出来る箇所は移動だけ。」


相当不味い状況になってる。たったの六十ぐらいで死ぬのは確定してるし、ご飯屋さんに来るのも街で見かけるのも若いのが大半だったからその前提条件は間違って無い筈。

老人になるまで生き残ってる事例が少ないのを見るに天敵が多いか争いが多いのが妥当。しかもアイツのあの感じ闘争に興奮する変態タイプだから衰えが見え始める年齢になると体と精神が合わず隙が生まれ死ぬ。多分あの感じ各所で恨み買ってるだろうし衰え始めるまでとなると余計時間は無駄に出来ないのに…。


「その通りだからどのぐらい持つ?」


「索敵に神経使いながらだと3日が限度で、索敵しないなら10日は止まらずいける。」


「じゃあ8日休憩入れず移動して、1日休憩挟んで再び8日繰り返して移動の繰り返しが妥当だね。」


つまり、索敵は入れずに走り続けるって事か。僕達の足力で逃げ切れる獣だけならいいけど…。でもここはリスク低めだし詰めれる箇所だから詰めた方がいい。が、ディーネの体力は持つのかが問題。僕とディーネだとディーネの方が体力あるけど、多分僕より寝てないし体力が落ちててもおかしくない。


「それでディーネの方は体力持つの?」


「当たり前でしょ。お姉さんに任せなさい!!」


凄い自信だし僕が寝る前より元気っぽいから大丈夫なのかな?


「了解。じゃあ普通に走るね。」


そこから僕達は走っての移動に切り替えて隣の国へと急ぐことにした。



※シルフらにとって睡眠とは?

彼らにとって睡眠とは細胞を休ませ、回復させる手段です。他種族は細胞分裂などで回復を行う為細胞や遺伝子に傷や汚れが蓄積し寿命を迎えます。一方、彼らは睡眠中にダメージを蓄積させずに正常に戻すため細胞の劣化が起こりません。仮に劣化したとしても十分な睡眠を取ればそのダメージすらも治癒出来るので肉体的な寿命はないに等しい程の年月生き続けられます。更には彼らの細胞は万能細胞に近いため睡眠により細胞が活性化すると欠損や腐敗以外であれば大体治ります。そのため全身火傷と火傷による失明すらもシルフは治りましたし、毒の排出やそのダメージの修復も比較的容易に終わっています。理論的には数万年程傷口を腐敗させずに放置し眠ると欠損すらも治りますが腐るのが先に来るため欠損が治った事例はありません。

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