第19話 出発準備
僕は不貞寝から起きると、顔を洗いぐらつく視界を無理矢理正常に戻し着替え椅子に座る。
「隣の国との距離は?」
「距離的には徒歩で数ヶ月って所だと思う。でも密入国予定だから舗装された道とかは通れないし、もっと掛かるかも…。」
「舗装されてない方が歩き易いし、そっちで良いよ。」
そもそも故郷では舗装されている道の方が稀だったし余計な事をしてない道の方が歩き慣れてるから歩き易い。それより懸念点は出没する獣の強さだ。人が通らない道となるとそこは獣の楽園になっていると言う事。どんな獣が出るか分からない以上ここを出発する前に万全の準備をしておく必要がある。
「じゃあ後は出発前の準備だね。食糧は獣を狩ればなんとかなるし武器を新調するのと水がいるね。」
「あと薬とか外傷を受けた際の応急処置が出来る物とかも必要だと思う。獣の巣窟に行くって事は怪我と隣り合わせだし…。」
傷を放置しているとどんな病原菌に感染するかも分からない。怪我をしない事に越した事は無いが、襲われて全てを完璧に対処できる訳じゃない。何よりこれから通る予定の道の地の利は獣側にある以上油断禁物。
「…お金足りるかな。」
ディーネは心配そうな顔で硬貨を見ているが最低限の装備を整えられるだけ額はある筈…。
「無駄遣いしなきゃ足りる筈だよ。あの集落で売り捌いた分もあるし、僕がご飯屋さんで働いてた時の給料もある。武器は完成品を買うと高く付くから材料買って作れば安く済む。水は信頼出来る所から汲んで確保すれば良い。お金を使うのは武器の材料と薬や知識とかじゃ無いかな。最優先は武器の材料、これをケチると碌な目に遭わないよ。」
宿代以外でお金使ってないし最低限の装備は整えられなきゃ困る。流石に贅沢は出来ないだろうけど、良い材料を安く入手する方法はあるしそれなりのは出来ると思う。
「あ、本とかは買わなくて大丈夫!私、読める本は大体読み尽くしたから。」
「了解。じゃあ薬の調達はディーネに任せて先に武器の原材料を買いに行くか。ふふふ、色んな店にコネを作ってあるから色々便利だと思うよー。」
「あ、そっか。老人と仲良くしてたもんね。多少の口利きぐらいならして貰えるかもしれないのか…。」
「うん、値段はある程度値切り交渉が出来るだろうし、物の品質で騙しにも来にくい。信頼や信用はさせたもん勝ちだよ。」
「やっぱシル君って時々悪魔になるよね…。」
最近分かってきたがディーネは僕を性悪な奴だと思ってる節がある気がする。僕はあくまでも目的のためならどんな努力も惜しまないだけの人なのに…。
「他種族と関わるならこれぐらいの方がいいよ?深入りして共倒れなんて冗談じゃないもん。」
「大丈夫!私、シル君以外興味も関心もないから!!」
いや、そんな堂々と宣言されてもそれはそれで問題だと思う。生きて行く以上一人に依存は出来ないし、流石に依存されるのは気持ち悪い。でもまぁ、ディーネが僕に依存している感じは無いしいつもの冗談だろうし気にする必要はない。
「じゃあ材料調達して準備したら出発しようか。」
「え?スルーするの?いつものツッコミは無し?」
反応待ちだったらしいディーネは置いといて僕は必要な物を調達しに向かった。
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