第15話 衝撃の事実

「ガラの悪い人達はどうやら寝てしまったらしいし傭兵の詰所に送り届けて来ます。」


「本当真面目だねぇ。」

「気をつけるんだよ?」

「そうじゃそうじゃ。ロンは若いからのぉ。奴隷商に見つかったら大変じゃ。くれぐれも裏道には近づくでないぞ。」


老人達は僕がチンピラを殺したのに気づいていないか、気づいていないフリをしてくれているのでこの食う価値も無いゴミを路地裏の鼠共に食わせるべく引き摺りながら移動する。僕が食わないからと言って命を奪った以上その肉をただ腐敗させる訳にはいかない。

一応血の一滴も出ていないし、折る角度を調整したので側から見れば死体を運んでいる様には見えない。精々酔い潰れた仲間を運んでいる様に見えただろう。そのまま路地裏に三つのゴミを捨てると僕は拠点としている宿に戻った。



ー宿にてー


「ディーネ、そっちはどう?」


「やっぱダメみたい。一般公開されている情報だと機密には辿り着けない。だからアプローチを変えてこの世界の人間について調べてみたんだけど色々分かったよ。そっちは?」


「噂や老人の知識は馬鹿にならないって事が分かったよ。相当国に対する不満は溜まってるし、外国とも険悪。そしてこの国戦争はしてないのにお金に困ってるみたい。これじゃあ僕達の正体が漏れたら飼い殺しか解体か…。色々不味い事態になりそうだね。変装してるのは正解だよ。」


何事も大小はあるが問題を抱えている物だがこの国はそのレベルが違う。民衆に周知されてしまう程に余裕がなくプロパガンダを打つ暇もない。表面上は日常でも、もう彼方此方からボロが出て国としては末期に差し掛かっていると思う。


「シル君の腕を落としたクソ鎧の大元が言ってた事に嘘はなかったって事か。」


「そう言う事になるね。」


「色々都合が良い。あとこの世界の人間って寿命が短いみたいだから復讐するのも時間制限が相当キツそうだよ。一族皆殺しは多少時間かければできると思うけど当人にはそんなに時間残ってないみたい。」


「短いって一万年とか?」


「大体六十年だって…。」


「へ?それは嘘だって。同じ様な見た目の種族なのにそこまで寿命差が出る訳が…。」


想定外過ぎる情報に頭を打たれた様な衝撃を受ける。たった六十年で死ぬのだ。ただの虫でさえ百年は生きると言うのにこの世界ではその虫にも劣るらしい。あまりに短く儚い。生物として不完全が過ぎる。


「でもどこも大体六十年だって書いてあったよ。一番長い所で六十一年だったし…。」


「…マジかぁ。短過ぎじゃん。予定をもっと早めないといけないのか。」


「急がないとダメだね。相当予定を切り詰めて突貫でやるしか無い。私もまさかここまで寿命が短いとは想定してなかったよ。」


「その短さだと今まで通りの作戦は実質不可能だしね…。どうしようか。急ぎ過ぎて無駄に命が散らない様にもしないといけないし、野蛮な方法は取れない…。」


「他にもこの世界の人間は滅茶苦茶脆いみたいで防具が充実してる。防具に力を入れている分威力のある武器や技術は停滞。防具頼りで肉体自体の強度はよくて停滞、悪くて低下し続けている。」


つまりそれは手加減ができないと狩る予定のない獣を狩る羽目になることを意味する。


「…手加減出来ないと事故が多発しそう。」


「シル君は殺すのに躊躇ないし、喧嘩とかはした事ないもんね。早急に反射的に殺すのは直さないと駄目かな。頑張ろうね!」


その実に良い笑顔に冷や汗が止まらなくなり、僕の魂が今すぐ逃げろと警鐘を鳴らす。

ディーネの訓練は技術を身につけるには最短だ。だけど、その他全ては最悪で限界を超えて追い詰められるのが目に見えている。


「嫌ぁぁぁ…。」

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