第14話 情報収集
この街に来て少しの時が過ぎた。僕は機密情報に辿り着くために周りの信用を勝ち取り、老人や民衆の噂に耳を傾け続け、ディーネは一般人が入館出来る図書館にてひたすら情報を集めた。
「ロン、いつも悪いね。」
「いえ当然のことをしてるだけですよー。」
「若いのに生真面目なのは今時珍しいのぉ。」
どんな情報も老人が持っている物だ。今は機密でも昔は公開されていたと言う事も多い。それ故に年長者個人が持つ情報も馬鹿にならない。情報はどれだけ秘密にしていてもいつかは漏れる物。別の時代か別の世界から人を誘拐する方法なんて数年で開発出来るわけがない。開発期間がそれなりにあった筈だ。つまりは情報が漏れるタイミングがそれだけ多かった筈。当然老人達の情報網に引っかかってる可能性も十分にある。
「困った時は助け合いが基本でしょう?こんな大きな街には初め来たのでここの常識は知りませんが僕の住んでいた村ではそうでしたよ?」
「儂等の様な働けぬ穀潰しは街や都市ではお荷物よ。助け合いだの理想論を出せる程の余裕がない。それもこれも全部魔物の被害が増え過ぎて国庫にも個人の資金にも余裕がないからだ。かと言って魔力がある限り魔物は殲滅出来んし、魔力をこの世から消す事も出来ん。何故か最近は各地で魔力の濃度が上がる事例が増えてるらしい。一体どうなることやら。」
「僕の住んでた村も急に森に呑まれて住めなくなりましたし、何かが起こってるんでしょう。」
「やはり上の連中の仕業か?」
「さぁのぉ。でも、いい噂は聞かん。」
「爺さん、国の批判なんぞしたら明日にでも断頭台に登ってるぞ。」
老人達の談義はいつも長いが有益だ。聞き損は無い。いつもの様に老人達から情報を集めていると柄の悪い、いかにもチンピラと言った格好の三人組に囲まれた。
「ガラの悪い連中が何の用ですか?」
当然僕が矢面に立つ。
「兄ちゃん大人しくしてれば悪い様にはしねぇよ。俺らが用があるのはそこの老人連中だからなぁ。」
ニチャァと笑うリーダーらしき男の顔は醜悪そのもの。見てるだけで嫌悪感が湧いてくる。
「この人達が何をしたと?」
「お前には関係ない事だ。邪魔をするならお前も死ぬぞ?」
死ぬか…。簡単に言ってくれる。弱者を襲い金銭を奪うことしか考えていない獣の癖に…。生きる為では無く私腹を肥やすためにだけに他者の命を奪うと言う思考に至るイカれの癖に…。
「それは各々死ぬ覚悟があると受けっとってよろしくて?」
「何だ兄ちゃん。俺らとやる気か?辞めておけお前が死ぬぞ。俺とて若い芽を摘みたくはない。これは間引きだ。」
「遺言はそれで良いの?」
少し睨むとチンピラは迷う事なく武器を抜いた。
「悪く思うなよ?」
それはこっちのセリフだ。武器を抜いたのなら死ぬ覚悟は十分にあるって宣言。僕が躊躇する必要は無くなった。
ゴキッ
「は?」
僕は無言で取り巻き二人の首を折った。片腕と片足さえ残ってれば首ぐらい簡単に折れる。なんなら片足だけでも折れる。それぐらい人の首は脆い。
「遺言はしっかりと聞き届けましたのでゴミや害は処分します。武器を抜いたのなら死んでも問題はないでしょ?まさか死ぬ覚悟が無いのにも関わらず武器を抜いたなんて事ありませんよね?」
「あぁ…。」
ゴキッ
現実が受け止められていないチンピラの命を容赦情け無く刈り取った。
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