第13話 情報収集の準備

うーん。起きたら知らない天井だった。…なんか意思失うたびにそうじゃない?


「あ、起きたの?なんか重度の中毒症状起こしてたみたいだよ。あの森は魔力って奴の濃度が異常値で人が生存できる環境じゃ無いみたい。でも、苦労した価値はあるよ!街の人に気づかれなかった!!これで情報抜けるだけ抜いて…。」


「ちょっと待って!人が生存できない環境でケロッとしてたディーネ怖いんだけど!!ゴッホゴッホッ!!」


口を押さえた手を見てみると血が付着していた。


「無理しちゃダメだよ?臓器の幾つかに結構致命的な傷がついてるって医者が言ってたから。」


「何で…。いや、毒ガス系なら血液で全身に運ばれて臓器が傷つくのは当たり前か。」


「まぁ、シル君なら3日もあれば治ると思うよ?切り落とされた訳でも内側を深く抉られた訳でも無いんだし。実際半日ぐらい寝てただけで毒の排出が終わって傷が治り始めてるもん。」


「なんか治る速度おかしくなって無い?前は全身黒焦げから動けるまで半年もかかったんだよ?」


個人的にこの世界に来てからおかしな事が起きすぎている気がする。鎧があんな俊敏なのもそうだし、謎の治療法である神聖魔法とやらもおかしい。崖の高さ的にあの能無しが生き残ってるのもおかしいし挙げるときりがない。


「損傷具合が違うし所詮毒だからね。それにシル君はまだ若いから傷が治るのが早いんだよ。」


「そうなのかなー。」


確かに毒なら抜ければ治り始めるのはおかしくないが致命傷と医者に診断されるほどの手遅れさで治る物なのか?

疑問はあるが治るんなら特に気にする必要は無いかな。


「それより、はいこれ。偽の身分証ね。あの廃村にあった資料から抜いてるからシル君はロン、私はレーヌ。集めた物の中で一番情報が近いのを選んでるから余程のことがなければバレる心配はないよ。どうせこの人達も死んでるだろうしね。」


「そうだね。すぐ偽物が作れちゃうとかディーネ、手先が器用だなあ。」


実際死にかけた訳だし相当運がいいか危機管理能力が高く無いと普通に死ぬと思う。それより偽物を作る速度が異次元。ディーネの手先が器用だって事は知ってたけどここまでくるとちょっと怖い。


「そうそう、情報抜けたら身分証燃やしてよー?」


「了解。ところでどこで情報抜けるのか分かってるの?」


常識や一般に出回っている情報ならばその辺の一般人に聞けばいいが、僕達が知りたいのは恐らく国家機密に近しい物。そう簡単には手に入らない。


「こう言う時代なら適当に図書館でも探せば良いし、王家だけの情報なら侵入すればいい。別にこの身分は捨てられる訳だし多少悪目立ちしても問題ない。」


「思い切りが大事って事か。」


うーん。機密が普通の図書館にあるとは思えないがディーネがそう言うなら何か確認があるのだろう。ここはディーネを信じて僕は僕のできる事をする。


「そう言う事。さて、身分証の偽装は終わってるし変装するよ。じっとしててね。」


「はーい。」


ディーネにされるがまま変装を終え、僕は周りの信用を勝ち取るべく行動を開始した。

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