第12話 強襲

 「なんだと?」

 未だにベッドで昏睡しているケインの傍らに立っているのは護衛隊の一人だ。

 「拐われた?アンスンが?」

 教会からの帰り、アンスンを乗せた馬車を襲った一団は野盗とは思えぬ手際で馬車を取り囲んだ。

 激しい抵抗を見せたケインが真っ先に狙われたらしい。

 通常であれば十人居ようがケインの敵ではない、それは俺が一番よく知っている、ここに来て一年どれだけの手合わせをしどれだけの討伐を共にしたかわからない。

 それだけにそのケインが瀕死の重傷を負い意識も戻らないほどの襲撃など信じられないくらいだ、だが間違いなく襲撃は行われアンスンが拐われた。

 ご丁寧にも俺宛の手紙はケインの腕にナイフで突き刺してあったらしい。

 傍らに立つ騎士も両の腕が骨折していると医師から聞かされた。

 俺は手紙を握りしめた。

 その手紙をするりと取ったのはグレアムだった。

 「向こうでどうにもならないから強行策に出たってところかな」

 グレアムが笑みを深める。

 「兄さん影が追ってる、直ぐに居場所がわかるはずだから準備してくれるかな」

 「わかった、いや待て、お前も行くつもりか?」

 「当たり前だろう」

 ああ、コイツも怒ってくれている。

 闇雲に飛び出してしまいたい衝動をなんとか抑えて俺は剣を腰に下げた。

 直ぐにグレアムが手配した影から報告が入った。

 使われていない山小屋に捉われていると。

 「ああ、彼女ですか……まだ諦めてなかったのですね」

 邸を飛び出す直前、エリアナが手紙を見てその怜悧な瞳を暗く光らせた。

 「絶対連れて帰ってくださいね」

 「当たり前だ」

 「そろそろ身の程を知ってもらわなきゃねぇ」

 厩番が直ぐに用意した馬に俺とグレアムが跨り走り出した。

 エリアナは俺たちを見送るとくるりと方向を変えて邸に戻り、伝書魔法を使った。

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