第3話  秋の始まり。

 またモンちゃんから電話があった。


「モンちゃん、どないしたん?」

「彼女が、俺のもとに帰ってきたんや」

「鼻血ブーって噴いてたのに?」

「そんな小さいことはどうでもええねん」

「わかってるわ、冗談や。で、彼女さんはなんで戻って来たん?」

「なんか、浮気されたらしいわ。めっちゃ傷ついてるねん」

「ほな、モンちゃんが癒やしてあげなアカンなぁ」

「そうやねん、だからしばらくの間、休みの日は全部彼女と会いたいねん」

「うん、そうしてあげた方がええと思うで」

「せやから、しばらく崔達とは遊べなくなるわぁ」

「そんなん、構わへんよ。彼女さんを大事にしてあげてや」

「おおきに! ほな、またな」

「うん、ほな、また」



 モンちゃんが来ないと、ヤマさんもダイサクも来ない。他の友人を呼ぼうかと思ったが、たまには1人で繁華街をブラブラしたくなった。服を買い、ステーキを食べて、もう、異人狩りなんかやめて……。


 だが、見てしまった。女の娘(こ)2人組が、マッチョな白人と黒人に手を引っ張られている。白人と黒人は酔っているらしい。強引なナンパだ。女の娘達は、涙目になって断っていた。


 「うりゃあ!」


 僕は、白人マッチョの脇腹に飛び膝蹴りを決めた。


「これ、持ってて!」


 彼女達に荷物を渡して、殴りかかる黒人の腕と襟を掴んで背負い投げ。だが、そこまでだった。スグに僕は2人がかりでボッコボコにされた。最後、倒れながら白人の足首を掴んで睨んだ。憐れみだろうか? 2人組は去って行った。残された僕はボロボロだった。女の娘達の肩を借りて歩かされた。近くのマンションの1室に入った。そこで僕は眠ってしまった。


 朝、起きると全身が痛かった。女の娘達がコーヒーを淹れてくれた。僕は、恐縮しながらコーヒーをいただいた。女の娘達は、昨夜は気付かなかったが2人とも美人だった。茶髪と黒髪。茶髪がキレイ系、黒髪がかわいい系。


「すみません、お邪魔しました。もう、帰ります」

「ちょっと、傷はもう大丈夫なん?」

「はい、骨に異常は無いみたいです。打撲だけなら大丈夫です」


 その時。


「連絡先、教えてもらえませんか?」


黒髪の方が、恥ずかしそうに俯いて行った。


「え?」



 夏が終わり、季節は秋になろうとしていた。







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【新】“異人狩りの夏”。※ボリュームアップ 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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