第3話 少年は起きる、誰が為に

「ーーーーーーん……」

目が覚める。

寝ぼけて、微かに歪んだ視界に景色が映る。

「こ、ここは……」

見たことがない景色。

壁は美しい白と金の装飾で彩られ、天井には大きなシャンデリア。家具も見たことがない荘厳なものだった。

まさか。

最悪な思考が少年の脳をよぎる。

「お目覚めになられましたか。白式様」

「うわっ!」

いきなり背後から声をかけられ少年の体がビクゥッと痙攣する。

後ろを振り向くと、メイド服を来た、長い黒髪の少女が佇んでいた。

「い、いや、その僕はここの人を殺したりは……」

「?何を仰っしゃっているのですか。ここに『人』

 はいません。」

「え……?」

反射で出た言葉に返された返答に少年は思考停止を起こす。

(え、えっと……?でも人がいないんだったら、こ

 の人は……?)

「御召物をお持ちしました。コチラに着替えて主様

 の所へ。」

その思考を遮る様にメイド服を纏った少女は先程まで少年が寝ていた大きなベッドに綺麗に折りたたまれた服を置く。

服にも目が行ったが、その服の下敷きになっているベッドやシーツもきめ細かく、上品質なものだとわかった。

「……?どうかいたしましたか?白式様」

「え、あ、あぁいや何でもない、です……」

「それでは私は部屋の外で待機しておりますので、

 着替えた時、または何か用がある際は扉をノック

 していただければ」

「は、はい……」

言われた通りにボロ布同等の服を脱ぎ、綺麗に折りたたまれた服に着替える。

コンコンコン、

「着替えましたけど……」

ガチャ

「では私についてきてください。魔女様がお待ちで

 す。」

「え、ま、魔女…って」

いきなり魔女というフレーズに驚いていると、メイド服の少女はスタスタと歩き始めていた。

「あ……ま、待ってください!」

そうして、小走りで後を追う。

少し歩くと廊下から渡り廊下へと変わる。

外を見れば、小さな中庭があり、素人目でも手入れが行き届いていると思うであろう綺麗に剪定された観葉植物や見たことのない花草が咲いていた。

更に歩くと、渡り廊下から外へ行く道が分岐していて、メイド服の少女はそこを曲がる。

辺り一面に純白の花が咲き誇り、花のアーチが形成されていた。

「うわぁ……」

見たことのない光景に見惚れていると、メイド服の少女が足を止める。

「到着致しました。」

「え。あ、はい……」

「魔女様、白式様がお目覚めになられたのでお連れ

 しました。」

メイド服の少女の目線を追う。

そこには小さなテーブルと椅子。

テーブルの上には菓子やミニケーキがバランスよく乗ったアフタヌーンティースタンドと金縁のティーカップ。

そして、椅子に腰掛けているのは1人の少女。

少年より少し年上だろうか。

金銀の髪に虹色の瞳、透き通った絹の様な白い肌。

纏っている魔術師用礼装ローブの様なドレスワンピースがひらりと風で靡く。

「やぁ、やっと起きたかい?」

少女がこちらに振り向く。

少年は心臓が締まる音を聞いた気がした。


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