第2話 少年は出会う、何の為に?

生まれつき、彼には身寄りがいなかった。

親も、友達も、そう名を呼べる人間が。

それでも彼は生き続けた。

だが、それでも限界はあった。

自分の意識とは別に、無意識で限界という壁を作っていた。

だからこそ、その限界はあまりにも辛かった。

逃げ出したい。でも、逃げ出す場所がない。

「僕、は…」

死んだ目で、包丁を首に当てる。

「生きてても、なにも…」

刃が首筋に触れる。

「意味が…ない、から…」

赤い泥が、首筋を駆ける。

〘ーーーーー!〙

(っ!)

ゾク、と鈍った生存本能が訴える。が、

それよりも、赤い泥の刃が胸に突き刺さる。

「ぁッ…ぁがぁ…」

凄まじい激痛が体を巡る。

何がおきた?

赤い泥はみるみる姿を変え、人形となり、再び刃を体中に突き刺す。

信じられないほど鋭い激痛が、思考を支配していく。

だが、頭は冷静に現状を処理して、激痛という危険信号を発令する。

視界が歪む。

ーーーーーー無理だ。

この体では、この、ナマクラでは。

抗えない。生きられない。

…めて、せめて、

「だ、れか…たすけて…」

直後だったか、いつだったか。

「安心したまえ。私は君を殺させない。」

1人、声が聴こえる。

赤い泥が剣に貫かれ、形を無くす。

「何が起きても、私は君を守るよ。白式。」

そう、言って、いた…

ブツッ


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