魔女と白式

MasterMM

第1話 事は起きる、人の為に

「で、行くのか?」

少年は魔女に問う。

「あぁ、行くさ。できれば、今日行きたいね。」

「……そうか。」

少年の方に魔女が振り向く。

「なんだい、さみしいのかい?」

「いや別に」

「なんだ~、冷たいな君は」

束の間の静寂。

「……で、どこまで覚えてさせる気だ?」

少年が静寂を裂く。

「そうだね、……『私以外全て』かな?」

「いいのかそれ、ズレるぞ。」

「いやズレないさ。なんせ私は、『魔女』なんだか

 らね。」

そうして魔女は歩き出す。

「次に会う時は……君が勇者になってからかな」

「そうだな、あんたの読みが当たればな」

「ハハッ、辛辣だなぁ、君は。」

魔女は祭壇の上に立つ。

「それじゃ、師匠として、最後に君に手向けを渡そ

 うか。」

音もなく、七つの剣が魔女の周りを囲む用に顕現する。

「えーと君が出したのは……『時戻し』と『破滅殺

 し』だったかな」

その内青黒く輝く剣と赤白く淡い剣を少年に撃つ。

その剣は少年の身体に刺さること無く吸い込まれ、一瞬の光を出しながら消滅する。

「君はちゃんと、あの子を大事にするんだよ?」

「……了解した」

「不服そうだね。何か問題でも?」

「いや、特に」

「そうかい。なら、頑張ってくれたまえ。」

さて、と魔女は踵を返す。

「そろそろお暇させてもらおうかな。」

魔女は残る5つの剣を1つに束ねる。

そして、勢い良く、自らの胸に突き刺す。

盛大に血飛沫が飛び散る。

「それじゃ、また。」

静かに口から血が流れる

「会うとしたら、『王冠』として、また会おう。」

そして、糸が切れたように身体から力が抜け、倒れ込む。

「……無茶すんな、あんたも。」

少年は静かに去っていった。

これは、「読まれもしない物語」に繋がる物語。

そして、束の間のお伽噺の物語。

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