第24話
「よし! まずは第一の関門、突破!」
手に持っているカギを指で弾いて、ボクはカッコよくパシッ! とキャッチする。
そしてボクの喜びに呼応するように、ステラもまた「ふふっ」と微笑んで口を開く。
「センカ様、よかったですね。思いの外すんなりとこちらの要求を呑んでくださって」
「ホント、そうだよね。もうちょっと長引くかなって思ったんだけど……」
パパ上とママ上に計画を話すと、すぐに了承されてカギを受け取った。
だけどその後、気になることを言ってたんだよね。
それは—――
『せ、センカなら……なぁ?』
『えぇ……そうね。センちゃんなら……ねぇ』
二人は謎の会話をしてたんだよね。ボクはその内容が良くわからなった。
ただ分かったことがあるとすれば—――
「仲良し夫婦ってのは、言葉を交わさす数が少なくても、思いが通じ合ってるんだね。スゴイよ!」
「いえ、あれは思いが通じ合っているとかではなくて—――恐怖を通じ合ったからこそ、お認めになったのですよ」
「恐怖? 何に?」
「……自覚がないのなら、それで構いません。(無自覚とかかわいいっ! 大好きっ!)」
ステラは何か知ってるようだけど、恐怖って一体、何の恐怖なのかな?
う~ん、考えても全く分からない!
「ん~でも、もうちょっと論争とか主張をぶつけ合うとかしたかったんだけどなー」
後頭部に手を回して、ボクは言葉を続ける。
「ボクがパパ上とママ上に向かってさ、『娯楽のない世界がどれほど窮屈で苦しいか、あなた達にはわからないのか!! ボクは自由が欲しい……。お花を育てたい……。そしてみんなも解放したいし、魔族とも仲良くなりたい……。その道がたとえ修羅の道であろうとボクは迷わず前に進む! 絶対に!』って、言ってみたかったのに」
「残念ですね」
「全くだよ」
そう言って、ボクたちは笑い合った。
「あぁーでも。主人公ムーブ、かましてみたかったなー。ぜーったいカッコよく決められる自信あったのに」
「—――主人公ですよ」
「えっ?」
ふと耳に入ったこと言葉に、ボクは思わずその声へと振り向く。
そこにはボクを優しく見つめる―――ステラの姿があった。
その慈愛溢れる温かいオーラに自分の疑問が飛びそうになるけど、それでも思い出して問いを投げかける。
「しゅ、主人公? ぼ、ボクが……?」
自分を指さしながら言うと、ステラは「えぇ」とこれもまた優しい声と一緒に頷いた。
「いったい、どういうこと?」
「たとえセンカ様が本物の主人公でなくとも、勇者でなくとも—――私にとっての主人公はあなたで、勇者もあなたです。……そういうこと、ですよ」
「え~~~~っ!! ボクってば、ステラの主人公で勇者なの!!」
「はい」
「ワーイ!! やったやったー!!」
と、ボクは喜びの舞を踊った。
だって嬉しいんだもん。
ボクにとっての憧れなんだから、主人公とか勇者は。
そっか~、ボクは……えへっ、ニヤニヤが止まらないよ~。
「えへっ、えへへへ—――」
「そんな私の主人公で勇者でもあるセンカ様は、どうして私にウソを吐いたのでしょうか?」
ウ・ソ……?
ボクは喜びの舞を踊るのを止めて、おそるおそるステラへと振り返る。
すると、そこにいたのは—――
「センカ様ー。一体どういうことか―――教えていただけませんか?」
慈愛の女神ではなく、瞳に一切の光が入らず真っ暗な目で首を傾げるステラがいた。
〜あとがき〜
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