第23話

「早速、お話をしたいんだけど……その姿じゃ無理そうだね。呻き声を上げるだけだし……。どう? 元に戻してほしい?」


 二人は縋るように、呻き声を上げてゆっくりと頷く。


「うん、わかった。いいよ、元に戻してあげても」


 そう言うと、二人の悲し気な顔に希望が宿り、どこか嬉しそうに見えた。


 二人はボクがタダで元に戻すと思ってるだろうけど……そこまで甘ちゃんじゃないよ。


 二人には—――をしてもらわなきゃ。


 そうじゃなきゃ、ボクの気が収まらない。


 なのでボクは、こう言う。


「ただし、条件があるよ。それは—――」



「「す、ステラ様っ!! 大変失礼なことを申し上げてしまいっ!! 大変無礼な扱いをしてしまいっ!! 誠に申し訳ございませんでしたっ!!」」


 ローテーブルの横にあるスペースにて、過去回想のシーンと同じような姿になったパパ上とママ上がステラに謝罪した。


 それは誰が見ても、謝意の気持ちが伝わるような心からの謝罪だった。


 なぜなら、二人とも頭を床にめり込ませて—――土下座していたからだ


 違うか。正確には土下座をさせられていたんだ。


 —――ボクによって。


 ボクはあの時、こう言ったんだ。


 条件が二つあると。


『使用人たち、みんなに酷いことしないと誓う』こと。


 そしてもう一つが—――『使用人たち、みんなに土下座で今までの行いを悔い改め謝罪する』こと。


 今やってるのはこれだね。


 隣でパパ上とママ上に唾を吐き捨てそうなほど、嫌悪を露わにして見下ろすステラに声を掛ける。


「ステラ、一先ずは許してくれないかな? まだまだステラからしたら腑に落ちないだろうけど、取り敢えずは……」


「……は、はいっ! もう私は大丈夫です!」


 うん、全く許してないね。

 

 ボクには笑顔を見せてるけど、チラッと二人を見る君の瞳には、怒りと憎悪が残ってるよ。


 それにずっと、「ゴミクズがゴミクズが—――」って呟いちゃってるし。


 まぁ、それだけ根深いものというわけだ。


「せ、センカ様っ!」


「わ、私たちはもう……!」


 二人はステラに許されたことで、この屈辱から解放されると笑みを浮かべる。


 しかし—――


「あれ? さっき言ったこと忘れたの? 無論、ステラと同じように他の使用人たちに謝罪してもらう予定だよ。ちゃんと一人一人、謝りにいかないとね?」


 そ、そんな……!! と、さっきの笑みはどこへやら。


 二人は凄まじい落ち込みっぷりだった。


 まだ下らないプライドが残ってるのかな? 


 だけど、人間早々、性根を変えられるほど器用じゃないしね。


 長い目で見よう。そうすれば自ずと、順応してくれるはずだ。


「でも、みんなへの謝罪は後にしてもらって—――ボクのお願い、聞いてくれる?」


 パパ上とママ上が顔を上げて、目を丸くする。


「おね……がい?」


「それはどういう……」


「それはね—――隠し通路のカギちょうだい?」


 両手を合わせてながらてへぺろして、そうおねだりした。





〜あとがき〜


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