第8話 世界の成り立ち②
「天使?なんですかそれは」
「天使は守護者とも呼べる存在のこと。天使の存在はある程度の魔力量を保有する者や一部の才能のある者しか認知できない。本来であれば君も見れるはずだが、君は相対的に魔力が低い。そのため君には認知することが出来ない。更に、天使の姿を視認できるレベルの者の数はおそらくこのメビウス内でも10名程度だろう。君もこの3日間でそのような人物にあったのでは?」
そういえば、ラウンジに行った時やガゼット団長にあった時に見つめられていたような気がするな。
「はい、あったように思います。」
「アリスから団員との邂逅の話は聞いている。マザーズは現在14名で構成されている。ちなみにアリスは序列で言うと4位。君にちょっかいを出したジャイは13位になる。この序列は単純に『強さ』と捉えていいよ。マザーズは基本的に魔力に長けている人間の集団だが、その中でも視認できるのは上位5名くらいだろう。私はマザーズの団員ではないが、魔力には優れている方でね。視認できる。」
アリスは4位ってことはかなり上位じゃないか。強そうには見えないが、前に感じた魔力の波動では確かにジャイとは違っていて、静かさの中に力強さがあったように思える。
どこの世界でも弱者ほど噛みつくってことか。
「私の背後にその天使が立っているということですか?」
想像すると恐怖が込みあがってくる。得体のしれない存在が、身近に四六時中居るのだ。
触れることもできず、見ることも、感じることすらできない。これは一重に恐怖だ。恐怖を払拭するためにももっと情報が欲しい。
「案ずることはないよ。君の守護者たる天使は『善』の側さ。魔力には善と悪の側面がある。これは表裏一体でね。『善』というのはその言葉のとおり、魔力を正しいおこないをすることに行使する存在という意味になる。メビウスも『善』の存在。仮に君の天使が悪であれば、即座に攻撃を加えている。・・・・もしそうならメビウスの全力を持って君を殺しているだろう。」
なんとえげつないことを笑いながら話すのか。この世界において生死とはより身近な話題のようだ。
「・・・その、、僕の後ろの天使はどのように見えているんでしょうか?」
「アリス、君にはどう見えている?」
「私には子供の頃に母から読み聞かせてもらった物語『聖獣様の遠吠え』に出てくる、獣によく似ているように映っています。」
「私も同じだね。瓜二つだよ。・・・ああ、『聖獣様の遠吠え』というのは絵本でね。君の世界にもあったろう。小さい頃に世界を教えたり、知恵を育むために作らている寓話だよ。もっともこの物語は歴史が古くてね。伝説に近いらしいけど。」
「それでは全く想像がつかないのですが・・・」
「アリスはレイ君の世界を学習しただろう?似た生物はいなかったか?」
「そうですね、、、確かトラという生物が居たような。色や見た目は若干違いますが、それに近いように思います。とても凛々しい佇まいです。あと立っているのではなく、浮遊していますよ。」
「トラですか・・・・」
なんだ、なんかかっこいいじゃないか!!強そうだし、少し安心した。
「天使はその宿主を守る存在。君に危害を加える存在が居た場合、全力で君を守る。つまりさっきの話になると、場合によっては君とメビウスの戦争になりかねなかったかもね。」
またえげつないことを笑いながら言う。と思っていた瞬間、
レイの頬から血が溢れる。
スミスの指先が頬を指している。スミスから攻撃されたということか?
頬には横一文字に傷が走り、その後、激痛が走った。一気に心拍数が上がる。
頭が混乱する。何が起きた?少し加減が違っていたら頭部が真横に立たれ、絶命していたのではないか?ゴブリンと対峙した時以上に恐怖を感じた瞬間だった。
「良かった。これで君はメビウスの一員だ。」
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